チームの精神的支柱であり、頼りになるベテラン。その中でも最年長選手は今季、どのようなプレーを見せてくれているのだろうか。パ・リーグ6球団の「最年長選手」の現在地は? 記録は9月3日現在 オリックス・バファローズ
阪神から今季加入した能見篤史のタフネスぶりには驚かされる。2月のキャンプでは初日から2日連続ブルペン入りし、誰もいないブルペンで一人黙々と投げることもあった。そもそも移籍と現役続行の決め手も「体が元気だから」。今年42歳を迎えても衰えを知らない。若手が多いチーム投手陣にあって、培ってきた経験は生きる“教本”で、投じるボールだけでなく、ボールを持つ時間の長さやクイックのスピード、さらにサイド気味に投じるなど腕の位置で変化をつけて打者を惑わす。投手コーチも兼任しながら救援左腕として今季23試合登板。一時は抑えを務めるなど、移籍初年度から大きな戦力になっている。
千葉ロッテマリーンズ
今年40歳を迎えた鳥谷敬。七番・遊撃で開幕スタメンを果たすなど健在ぶりをアピールするも7月に二軍調整に。五輪中断期間のエキシビションマッチでは一軍で汗を流したが、後半戦は二軍スタートとなっている。とはいえ「調子をもう1回上げてもらうということと、勝つために彼の力が必要なので、下で試合に数多く出て調子を上げてほしい」と
井口資仁監督の期待は変わらない。世代交代が進むチームだが、今季一塁守備でも出場するなど、貪欲な姿勢を崩さぬベテラン。プロ18年間で通算2099安打を誇るバットマンは、培ってきた経験を武器に勝負の終盤戦に力になる。
福岡ソフトバンクホークス
入団時からの目標をクリアし、和田毅はますます輝きを増している。「40歳になっても第一線で、先発として投げている」。その言葉を現実のものとすべく、春季キャンプで40歳を迎えると、しっかりとした調整で開幕先発ローテをつかんだ。球速以上に伸びのあるストレートで三振を奪ったかと思えば、変化球でタイミングをズラして打たせて取る。試合の組み立ての端々に、ベテランの技が光る。交流戦の甲子園での試合(6月6日の阪神戦)では7回を4安打無失点と、年月を超えても色褪せない好投でファンを沸かせた。
松坂大輔(
西武)の引退で『松坂世代』の現役選手は和田だけになった。40歳になっても、チームにとっては先発ローテの一角に欠かせない存在だ。「1年1年が勝負」が勝負と語る左腕だが、“ホークス左腕エース”の座は簡単には後輩たちに譲らない。
東北楽天ゴールデンイーグルス
プロ17年目の今季、一軍昇格を果たせないまま、7月3日に39歳の誕生日を迎えた。
浅村栄斗、
鈴木大地、
茂木栄五郎と打線のキーマンが内野レギュラーとして存在感を示し、プロ2年目の
小深田大翔が遊撃に定着。バックアップ要員には23歳の
村林一輝や20歳の
黒川史陽と若手が積極起用されているのが現状だ。オフの自主トレには小深田、黒川に加えて大卒4年目の
山崎剛も参加し、「藤田塾」でレベルアップを促した。それでも、2013年のリーグ優勝、日本一を知る残り少ないメンバーの一人。勝負どころのシーズン最終盤に力を発揮することができるか。
北海道日本ハムファイターズ
チーム最年長選手はバッテリーコーチ兼任の鶴岡慎也。今季、不惑の40歳を迎えた。選手兼任コーチとしては3年目、
清水優心、
石川亮ら次代の主戦捕手の育成に注力している。選手としての今季一軍出場は12試合で18打数5安打、打率.278。5月は4試合でスタメンマスクをかぶった。23日の西武戦(メットライフ)では「鶴岡捕手が自分の良さを引き出すリードをしてくれたので、全体的にうまく投球することができた」と言う新外国人・
アーリンの初勝利をアシスト。2安打2得点とバットでも貢献した。6月4日の
巨人戦(東京ドーム)以来、試合出場はないが、まだまだ若手捕手には負けていない。熟練されたリードで投手陣をけん引するベテランの存在は頼もしい。
埼玉西武ライオンズ
西武・松坂大輔
古巣での完全復活は叶わず――。7月7日に松坂大輔が今季限りで引退することが発表された。ソフトバンクでメジャー・リーグから日本球界に復帰後、故障に苦しみ、
中日を経て2020年に西武に復帰。オープン戦では2試合6イニングを投げて防御率3.00。先発ローテーション入りもほぼ当確ランプが灯っていた。だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が3カ月間延期に。コンディショニング向上を目的に右ヒザに注射を打つため戦列を離れると、開幕二軍スタートに。さらに試練に襲われる。右ヒジに異変が生じてしびれを除去するため、7月に脊椎内視鏡頸椎手術を受けた。その後は球団施設などで毎日復帰に向けて必死にリハビリやトレーニングを重ねたが、メットライフドームのマウンドで雄姿を見せることができなかった。9月13日で41歳になる松坂。本人が一番無念だろう。
写真=BBM