ヤクルトが2015年以来、6年ぶりに8度目のリーグ優勝を飾った。10月26日、マジック2で迎えた
DeNA戦(横浜)に5対1で勝利。マジック1となり、その後、2位・
阪神が
中日に敗れ、ヤクルトの優勝が決まった。
優勝監督となったのは就任2年目の高津臣吾監督だ。2年連続最下位で沈んでいたチームを見事に頂点に引き上げた。現役時代はヤクルトが黄金時代を築いた1990年代に守護神で活躍。右サイドから繰り出される伝家の宝刀・シンカーを武器に通算286セーブを記録した。メジャーのホワイトソックスでも04年に19セーブを挙げるなど守護神として結果を残し、監督のオジー・ギーエンが「マリアノ・リベラでも連れてこない限り、シンゴは我々にとって最高のクローザーだ」と絶賛するほどだった。
輝かしい野球人生に見えるが、それは高津監督のキャリアの一面しか表していない。日本球界に復帰後はヤクルトに入団テストで復帰し、2年間で計26セーブを挙げるが戦力外通告を受ける。アメリカ、韓国、台湾と渡り歩いた後、独立リーグ・新潟アルビレックスでプレー。日本、米国、韓国、台湾の4カ国のリーグでプレーした初の日本人選手で、名球会会員が独立リーグでプレーするのも史上初だった。
ヤクルトに指導者として復帰し、一軍投手コーチ、二軍監督を経て昨年から一軍の監督に就任。対話を重視する姿勢は変わらず、練習中から選手たちの動きに気を配る。さらに最下位に沈んだ昨季、一番悔しさを露わにしていたのが高津監督だった。誰よりも負けず嫌い。だが、選手を結果だけで批判することはない。寄り添う姿勢で失敗してもチャンスを与えた。

ナインの手により、胴上げで5度宙を舞った高津監督
現役時代の恩師・
野村克也監督の考えも組み込みながら、「1点をどうやって取り、どうやって防ぐか」にこだわり、選手たちの“野球脳”が鍛えられた。その結果、チームの精神的支柱である
青木宣親、15年のリーグ優勝の味を知る
石川雅規、
小川泰弘、
中村悠平、
山田哲人、
川端慎吾に加え、
村上宗隆、
塩見泰隆、
奥川恭伸、
高橋奎二ら若手の成長株ががっちりかみ合い、チームは生まれ変わり、見事にセ・リーグで栄冠をつかんだ。
写真=BBM