読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回はバント編。回答者は歴代2位の451犠打を誇る元西武ほかの平野謙氏だ。 Q.バントを成功させるための、正しいバットの握り方を教えてください。(山梨県・匿名希望・16歳)

西武時代の平野謙氏
A.握る力の比率は太いほうが8or9、グリップ側が2or1 
写真[1]
バントをする際のバットの握りで重要なのは、ヘッドに近いほうの手、バットの太いほうを握る手です。このときに、わしづかみと言えばいいのでしょうか。指をすべておおいかぶせるように握っている人もいますが、これは危険です。指の部分がボール方向に向いてしまいますので、ボールが指に当たる可能性があり、特に硬式ボールを使っている場合、指に当たって骨折などのケガにもつながります。手のひらで後ろからバットを支える感覚で握り、指を投手側には見せないように注意してください(写真[1])。

写真[2]
このとき手のひらとバットの間に空間をつくると、芯近くに当たっても多少勢いが弱まります(写真[2])。空間がクッションの役割をするイメージですね。このような握りだと力が入らないと思うかもしれませんが、スイングをするわけではないので十分です。
さらに言えば、それでもなお、握る力の比率としては太いほうが8もしくは9で、グリップ側は2もしくは1。グリップは支えるだけの感覚で構いません。グリップを持つほうに力が入ると手を使ってバットを操作しがちになり、どうしても目線がズレる。あくまでヘッド寄りの手を意識し、そちらを動かしたほうがズレにくいというのは分かると思います。
僕は練習だと太いほうだけを持ってやったりもしました。実際、試合でも片手でいいかなと思ったことがありますが、不謹慎と言われそうでやめました(笑)。
あとはバントとバスターで握りを変えないことも大事です。バスターは奇襲ですので、それが事前に相手に分かったら成功率が下がりますからね。
●平野謙(ひらの・けん)
1955年6月20日生まれ。愛知県出身。犬山高から名商大を経て78年ドラフト外で
中日入団。88年に西武、94年に
ロッテに移籍し、96年現役引退。現役生活19年の通算成績は1683試合出場、打率.273、53本塁打、479打点、230盗塁。
『週刊ベースボール』2021年11月8日号(10月27日発売)より
写真=BBM