誰よりも強い変わりたい思い

立浪監督[左]に指導を受ける清宮
2月16日に沖縄・北谷で行われた練習試合・
中日対
日本ハム戦で、見慣れない光景が話題になった。日本ハムの打撃練習中に、フリー打撃を終えた
清宮幸太郎が日本ハム・
新庄剛志監督と共に中日・
立浪和義監督の下へ。新庄監督がお願いする形で、立浪監督の指導が実現。清宮に身ぶり手ぶりでアドバイスを送った。
長距離砲としての潜在能力は間違いなく高い。課題は確実性だ。清宮と同じ左打者で現役時代に通算2480安打、NPB記録の二塁打487本をマークし、卓越した野球理論に定評がある立浪監督の助言は貴重だ。新庄監督も覚醒のきっかけをつかんでほしいという思いが強いだろう。
スポーツ紙の担当記者は、今年の清宮について「明らかに目つきが変わった」と分析する。
「おおらかな性格で優しい。協調性もあり優等生だったが、ハングリー精神に物足りなさを感じる部分もありました。危機感は感じていたと思いますが、それが表に出てこない。でも今年は違います。新庄監督から減量指令を受けて、『本当にできるのかな』と懐疑的な見方がありましたが、103キロから9キロ減の94キロときっちり絞ってきた。
ソフトバンク・
柳田悠岐に弟子入りした自主トレ中に新型コロナウイルスの陽性判定を受けたため、春季キャンプは二軍スタートでしたが、鋭い目つきで練習に打ち込んでいたのが印象的だった。変わりたいという思いは誰よりも強いのではないでしょうか」
中学時代にリトルリーグ世界選手権で投打に活躍して優勝に貢献。米国メディアが命名した称号は「和製ベーブ・ルース」。早稲田実業に進学すると1年から主軸として活躍し、甲子園に2度出場して史上最多の高校野球通算111本塁打をマークした。ドラフトでは高校生最多タイの7球団が競合し、日本ハムに入団。球界を代表するスラッガーとして期待は大きかった。当時の
栗山英樹監督は2018年2月に米国・アリゾナで行った春季キャンプで、ルーキーだった清宮の起用法について、週刊ベースボールのインタビューでこう語っている。
「もろろん、使いますよ。これは彼がドラフトでファイターズに入ることが決まったときから言い続けてきましたけど、2020年の東京オリンピック、2年半後の侍ジャパンの戦力になるというのが最低ラインの目標だと思っているので。そのためにこれからどういったステップを踏んでいけば一番いいのかを考えていますし、いまは打撃練習がケガの影響で思うようにできていませんけど、いざ打席に立てば打つことはもう間違いないので。だから幸太郎にはいまだけを見るのではなく、2020年、またその先に向けて一歩ずつ焦らずにやっていってほしいと思っています」
プロ野球人生のターニングポイント
だが、現実は厳しかった。高卒1年目の18年から3年連続7本塁打を放つが、打率は2割前後と確実性が低い。昨年は故障以外で初の開幕二軍スタート。チームが低迷しているにもかかわらず、一度も一軍昇格できなかった。イースタンで106試合に出場し、打率.199、19本塁打、60打点。
渡部健人(
西武)と共に本塁打王を獲得したが、リーグワーストの113三振と粗さは改善されていない。
今季でプロ5年目。期待値で起用される時期は過ぎている。球界を代表するスラッガーに成長した同期入団の
ヤクルト・
村上宗隆に大きく水を開けられ、昨秋のドラフトで指名された大卒ルーキーの
ブライト健太、
鵜飼航丞(共に中日)、
安田悠馬(
楽天)は同世代だ。新庄監督の下、生まれ変わった姿を見せられるか。今年がプロ野球人生のターニングポイントになることは間違いない。
写真=BBM