読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回はバント編。回答者は歴代2位の451犠打を誇る元西武ほかの平野謙氏だ。 Q.今のプロ野球の選手は昔の選手よりバントが下手な気がします。平野さんはどう思いますか。(大阪府・匿名希望・45歳)

西武時代の平野氏
A.各チーム、もう少し重視して練習に取り入れてもいいと思う 下手と言うとかわいそうかもしれませんが、あまりうまくないとはよく思います(笑)。実際、記録上バント失敗にはなっていなくても、なかなか一発で決まらず、何回かやってヒッティングに切り替えたりというシーンもよく見られますからね。これはある意味、当然なことで、バントの機会、さらに言えば練習自体がかなり減っています。僕や
巨人にいた
川相昌弘のように、つなぎ役が入っていた二番に、今は強打者が置かれるケースが増えているのもあるでしょうが、戦術的にあまりバントを重要視してない傾向はあると思います。
数自体を見ても、僕が現役最終年の1996年であれば、両リーグ最多は僕が所属していた
ロッテで148でした。2020年は120試合だったので、置いておき、143試合やった2019年の最多で見ると
広島の111です。96年は130試合制ですから、送りバント自体が減っているのは確かですね。ただ、そうは言っても1シーズンどのチームも100前後はしているわけですし、試合を見ていても、ここはバントをしておけば1点入ったなと感じるシーンは読者の皆さんも多いと思います。各チーム、もう少し重視して練習に取り入れてもいいですよね。
失敗する選手を見ていると、やはり手で細工する選手、要はバットでボールを追い掛けてしまっているケースが多いようです。以前もお話しましたが、形を決めたら、バットと目の位置は変えないというのがバントの鉄則です。

イラスト=横山英史
うまくなる練習ですか? 意識としてはキャッチボールですね。ボールを柔らかく捕球するような意識で当ててみてください。自分のポイントにグラブがあるつもりでしてみてもいいかもしれないですね。あとは練習量です。僕も現役時代、特に若手時代は、とにかく時間をかけてやりました。アマチュアではほとんどバントはやったことがなかったし、左打席はプロに入ってスイッチになって始めたものですしね。
一ついいのは、プロ野球はマシンがあるということです。打撃練習と違って、それほど大きなスペースはいりませんし、一人でもずっとできます。あのころは、これだけやったらゲームで失敗はせんやろと自信が持てるところまで練習しました。今の選手も、とことんバントを磨いたら、間違いなく、自分がプロの世界で生き残るための武器になると思うんですけど、地味に見えて嫌なのかな(苦笑)。
●平野謙(ひらの・けん)
1955年6月20日生まれ。愛知県出身。犬山高から名商大を経て78年ドラフト外で
中日入団。88年に西武、94年にロッテに移籍し、96年現役引退。現役生活19年の通算成績は1683試合出場、打率.273、53本塁打、479打点、230盗塁。
『週刊ベースボール』2021年12月13日号(12月1日発売)より
写真=BBM