通算43打数5安打、0本塁打、打率.116

“サモアの怪人”と称され強打を発揮したソレイタだったが……
連続打数本塁打のプロ野球記録は4連発。これには四死球など打数にカウントされない打席を途中に挟んでも、あるいは試合をまたがっても構わない。これをシーズンに2度も、しかも来日1年目にして、やってのけた助っ人がいた。
日本ハムの“サモアの怪人”ソレイタだ。
1980年に来日。ペナントレースが開幕して間もない月20日のことだった。日本ハムは大阪球場で南海とのダブルヘッダー。その第2試合で、ソレイタは1死球を挟む4打数連続本塁打を達成する。ゲーム4打数連発はプロ野球3人目となる快挙だった。2度目は9月。4日に日生球場で近鉄からゲーム最後の打席で本塁打を放ったソレイタは、翌5日に
西武球場で西武と対戦すると、いきなり3打数連続。2試合にまたがる4連発を達成した。ただ、打つほうにとっては快挙でも、打たれるほうには屈辱だ。間違っても5連発で記録を更新されることだけは阻止しなければならない。
この80年はプロ野球記録に並ぶゲーム5三振もあったソレイタ。当たらないときは徹底して当たらないが、打ち始めたら止まらないソレイタが、最後の打席で記録を更新する可能性は、それなりに高かっただろう。そこで西武が送り込んだ刺客は、
永射保だった。永射は左打者の背中からストライクゾーンに食い込んでくるカーブを駆使した“左キラー”。永射の攻略のために
ロッテのリーが右打席に入ったことは紹介したが、ソレイタは左打者ながら左腕に対して極端に数字を落としたわけではないものの、永射だけは別格だった。

左キラーとして強打者を封じた永射
それまで10打数で完璧に抑えられていたソレイタ。このときのソレイタを永射は「俺の顔を見たら涙目になっていた」と振り返っている。快挙を目前にして立ちはだかった天敵。口ヒゲをたくわえ、コワモテにも見える助っ人だったが、とはいえ泣きたくもなるだろう。そしてソレイタは三振。新記録はならなかった。
永射との対戦は、この80年は16打数で1安打も残せず、5三振。83年オフに退団するまでの通算では43打数5安打、打率.116で、22三振を喫している。永射から本塁打は最後まで打てなかった。
文=犬企画マンホール 写真=BBM