強打を誇る打者を置くのか、それとも小技に長ける打者を置くのか。そのチームの攻撃法が色濃く映し出される二番打者。まだ開幕して間もないが、各球団は二番にどのようなタイプの打者が座っているのか。セ・リーグ6球団の「二番打者事情」は――。 ※記録は4月1日現在 読売ジャイアンツ
原辰徳監督が掲げてきた「攻撃型二番打者」の形に戻っている。開幕前までは一番に強打の
丸佳浩や坂本勇人を置く形を探り、その場合は二番に「つなぎや送り」を求める考えを示していたが、開幕3戦目から坂本勇が早期復帰するとそのまま二番に据えた。4月1日の
阪神戦(東京ドーム)で初回、
藤浪晋太郎から先制1号ソロを左中間席にたたき込んだように、狙いは序盤からたたみ掛ける攻撃を仕掛けること、強打者に多くの打席を回すことだが、それが機能するためには一番打者がしっかりと攻撃の着火点になる必要がある。開幕から
吉川尚輝が一番に座るもののバットは湿っている。指揮官の「強打の二番」構想が継続していくかは、長年の課題となっている「一番問題」がカギとなりそうだ。
中日ドラゴンズ
立浪ドラゴンズの二番に定着しつつあるのは、高卒3年目の岡林勇希だ。巨人の開幕3連戦では2試合で猛打賞を記録。巧みなバットさばきで安打を連ねた。オープン戦の最終盤で右手薬指を負傷。開幕スタメン当確から一転、暗雲が立ち込めたが、「今年が勝負の年。気持ちの入り具合が違った」と出場を直訴した。ただ、
立浪和義監督からの注文は厳しい。3月30日の
DeNA戦(バンテリン)では3打席続けてフライを打ち上げて交代させられている。岡林の求められている打撃とは違うということだ。二番に定着するためには、もう少し粘り強さが欲しい。立浪監督としては
大島洋平-岡林の一、二番コンビが理想のオーダーなのだから。
阪神タイガース
開幕7連敗と苦境に陥る中で二番が機能しているかどうかは、はっきりとは分からないが、チームは波に乗れていない。開幕戦は昨年後半から二番に定着していた中野拓夢が務めた。2019、20年の盗塁王の
近本光司と、昨季の盗塁王の中野が組む一、二番コンビは相手バッテリーには脅威になるはず。しかし、4連敗を喫したあとの3月30日の
広島戦(マツダ広島)では
糸原健斗を二番に起用。この起用も功を奏さず4月1日の巨人戦(東京ドーム)では中野が二番に戻った。この1日の試合では一番の近本が2安打を放ち復調気配。俊足コンビで打線の立て直しが期待されている。
東京ヤクルトスワローズ
昨季同様、今季も二番を務めるのはベテランの青木宣親だ。役割は「打って、つなぐ二番」で、2018年に日本球界復帰以降、記録した犠打はわずか一つである。通算打率3割超えのヒットマンは、その高度な打撃技術で状況に応じたバッティングを披露。単なる進塁打ではなく、自身も安打で出塁することでチャンスを一気に拡大させる狙いがある。だが、今季はオープン戦から調子が上がらず、開幕後ここまで7試合を終えて打率.167と苦しんでいる状況だ。
塩見泰隆、
山田哲人の間を打つ青木が調子を取り戻せば、得点力は一気にアップするに違いない。
広島東洋カープ
佐々岡真司監督が「今年は長打というよりも、つないでつないで1点」と語る今季の打線。それを可能にする二番打者として、菊池涼介は打ってつけの存在だ。一番・
西川龍馬とともに攻撃に勢いをもたらしていることは、チームの1試合での安打数、開幕6連勝を見ても明らかだ。昨季はキャリアハイの16本塁打を記録するなどパンチ力がある一方で、状況を読み、求められている役割に徹することができるのが菊池涼の強みだ。3月29日の阪神戦(マツダ広島)では、3回無死一塁の場面で投前に犠打を決め、史上8人目となる通算300犠打に到達。これが先制点につながったのだが、菊池涼自身は「ただ、つないだだけ」と普段どおり。淡々と仕事をこなす、その姿が頼もしい。
横浜DeNAベイスターズ
開幕からソト、
オースティンを欠く暫定的なラインアップの中で、「二番・楠本泰史」という形が定着してきた。一番・
桑原将志が出塁のあと持ち前のシュアな打撃でチャンスを広げ、得点につなげるパターンが増えている。走者がいれば、引っ張って右方向にゴロを打つことで進塁打が期待でき、出塁すれば足も使える。ここまで7試合出場で打率.276、2盗塁と持ち味を発揮中だ。得点圏打率も5割(4打数2安打)と頼もしい。同じ外野手であるオースティンが一軍合流したとしても、スタメンを外すのをためらわれる存在となりつつある。
写真=BBM