変わらなければいけない危機感

4月20日のヤクルト戦で決勝打を放った京田
この男が打てば、チームが活気づく。
中日で「不動の遊撃手」として期待される
京田陽太だ。
打率1割台と打撃不振に苦しんでいたが、28歳の誕生日を迎えた今月20日のヤクルト戦(バンテリン)で、2回無死満塁から
小川泰弘の直球を中前にはじき返す先制の2点適時打。この一打が決勝打となった。打撃不振でも我慢強くスタメンで起用し続けた
立浪和義監督の期待に応え、「最悪の滑り出しなので、ここから何とか1試合でも巻き返せるように、皆さんの期待に応えたい」と今季初のお立ち台で宣言。中日ファンから大きな拍手を浴びた。
ゴールデン・グラブ賞は一度も受賞していないが、セ・リーグ屈指の守備の名手で知られる。軽いフットワークと身のこなし、球際の強さで幾度もチームを救う好守を見せ、投手陣の信頼は厚い。課題は打撃だ。1年目の2017年にマークした打率.264、23盗塁が自己最高でその後は伸び悩んでいた。プロ5年目の昨年は打撃不振で自身初のファーム降格を経験。本人も変わらなければいけない危機感は強かっただろう。昨秋のキャンプでは、バットを体の正面で低く構え、高く上げて大根切りのように振り下ろす打撃フォームに改造。立浪監督、
中村紀洋打撃コーチにつきっきりで指導を受ける場面が見られた。
打撃フォームを一新した真意
京田は今年3月に週刊ベースボールのインタビューで、打撃フォームを一新した真意についてこう語っている。
「昨年の春季キャンプで(立浪和義)監督が臨時コーチで来られて、そのときに悪い癖を指摘され、必死に取り組んでいたんですけど、なかなか直りませんでした。期待に応えられなかったんです。でも昨年の秋から新体制になったことで、自分の中で、今度こそ思いきってやり切ろうという気持ちになりました」
「ボールが来ているのにさらに引いてしまう癖があって……それがあると速いボールにはどうしても差し込まれてしまいます。上から構えてそこからトップに入っていく形、そのほうが僕も一発でトップに入りやすいので、思いきってそうすることにしました。これまでは(二度引きで)タイミングを取るのが遅かったのですが、高く構えるためには早く準備をしないと投手の間合いが取れませんので、これで早くタイミングを取れるようになりました」
2試合連続スタメンから外れ

4月7日のヤクルト戦では2打席連続アーチを放ったが……
長年築き上げたフォームを大きく変える上で試行錯誤もあるだろう。開幕11試合で33打数3安打、打率.091.今月7日のヤクルト戦(神宮)で2打席連続アーチを放ったが、その後もマルチ安打はなしと固め打ちまでにはいかない。22日の
巨人戦(バンテリンドーム)から2試合連続スタメンから外れ、出場しなかった。
かつて
落合博満監督の下で黄金時代を築いた中日だが、京田が入団以降は優勝どころか、優勝争いを一度も経験していない。「不動の遊撃手」として期待は大きいが、結果が出なければ定位置を保証されていないのがプロの世界だ。真面目な性格で練習熱心。選手会長としてチームを思う気持ちは誰よりも強い。立浪監督を胴上げするためにも京田の活躍は不可欠だ。再び遊撃の定位置に返り咲けるか――。
写真=BBM