週刊ベースボールONLINE

高校野球リポート

神奈川春王者に輝いた桐光学園。歴史を塗り替えるために激しさを増す“先輩後輩”のエース争い

 

粘投を見せ決勝で完投勝利


桐光学園高の144キロ右腕・針谷は春季神奈川県大会で優勝へ導き、大きく成長した


 尊敬する先輩の実績を超えた。

 桐光学園高は5月1日、春季神奈川県大会決勝で桐蔭学園高を6対2で下し、12年ぶり4度目の優勝を決めた。

 4点リードで迎えた9回表二死走者なし。マウンド上の桐光学園高の右腕エース・針谷隼和(3年)は、投手を強襲する痛烈なライナーを超美技でキャッチ。7安打を浴びながら粘投を見せ、109球で完投した。投球の軸であるストレートは終盤も衰えず、カーブでタイミングを外し、フォークにもキレがあった。

「優勝した実感はありません。1試合1試合、先を見ずにやってきた結果です」

 針谷は今春の県大会は当初、背番号3だった。2年生右腕・中平陽翔が冬場を通して10キロアップ(最速138キロ)するなど急成長を遂げ、背番号1を着けた。針谷は2年時から公式戦で登板機会を重ねていたが、桐光学園高はチーム内競争が激しい。打撃に定評のある針谷はバットと救援投手で、チームに貢献していた。金沢高との4回戦では5回からリリーフすると、5回無安打、8奪三振と圧倒。

 試合後、背番号3について問われた針谷は「冬場は外野、一塁もやってきました。中平は練習試合でも試合をしっかりつくり、エースとしてふさわしい投球を見せていた」と、後輩の実力を素直に認める、器の大きさがあった。

 桐光学園高・野呂雅之監督は4回戦の快投を受けて「背番号1に値する」と、準々決勝で針谷にエース番号を与えた。そして、準決勝進出をかけた横浜高との一戦では1失点完投勝利(7対1)を挙げた。

 4回戦後は大人の対応に徹した針谷も「自分が『1』を着けたい思いがあった。力を見せるためにやってきた」と、本音をのぞかせた。

 背番号10となった中平も「夏に向けて『1』を取り返すように頑張る」と、横浜商高との準決勝では8回無失点でコールド勝ち。そして、桐蔭学園高の決勝では針谷が冒頭のように、3年生エースの意地を見せたのである。

 野呂監督は「切磋琢磨は続く」と宣言し、2人による主戦争いは夏まで激しさを増す。

目標は「甲子園優勝」


 針谷は2学年上の左腕・安達壮汰(法大2年)と1学年上の右腕・中嶋太一(日体大1年)を尊敬し、背中を追ってきた。今春、先輩2人が成し遂げられなかった「神奈川制覇」を遂げた。しかし、目標はまだ先にある。

「歴史を塗り替えていく。最終的には、甲子園優勝です!!」

 桐光学園高は2年生エース・松井裕樹(現楽天)を擁した2012年夏を最後に、甲子園から遠ざかっている。同校の過去最高成績は同夏のベスト8。10年ぶりの全国舞台を目指し、新たな1ページを刻んでいく覚悟である。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング