負のスパイラルに陥った巨人

中継ぎの軸として今後も期待がかかる鍬原
巨人が苦境を迎えている。ゴールデンウィークで1勝8敗と大きく負け越し。
坂本勇人、
吉川尚輝と二遊間のレギュラーが故障により相次いで戦線離脱し、エース・
菅野智之も右ヒジの違和感で4月30日に登録抹消された。救援陣が踏ん張れない試合が続き、負のスパイラルから抜け出せない。今月8日の
ヤクルト戦(東京ドーム)では、1点リードの9回に登板した守護神・
大勢が
山崎晃大朗に逆転2点適時二塁打を浴びてプロ初黒星。4連敗で3位に転落した。
坂本、吉川の穴はなかなか埋まらない。今後もロースコアでの戦いを強いられることが増えるだろう。その中でキーマンになるのが、「8回の男」として春先の首位快走に大きく貢献した
鍬原拓也だ。
ドラ1右腕は1年目の2018年に1勝2敗、防御率6.83。数字だけ見ると不本意だが、快速球に大きな可能性を感じさせた。OBで野球評論家の
川口和久氏は週刊ベースボールのコラムで、「楽しみなのは、今年のドラ1・鍬原拓也。ファームでは150キロを連発し、いいピッチングをしているらしいね。前も書いたことがあるけど、俺は彼を応援してるんだ。お母さんが女手一つで、経済的に苦労しながら一生懸命育て、野球も続けさせてくれたんでしょ。親孝行らしいし、好感度はマックスさ。5月31日が初先発らしいけど、いいピッチングをしてほしいね。彼が、今年は故障中だけど、昨年の新人・
畠世周並みの活躍をしてくれたら、一気にチームが浮上する可能性もあるよ」と期待を込めていた。プロ初登板となった5月31日の
日本ハム戦(東京ドーム)。5回3失点プロ初黒星を喫したが、4者連続を含む7三振を奪った。
進退をかけたシーズンで
だが、2年目以降も制球難や故障で一軍定着できない。19年の秋季キャンプに
原辰徳監督の助言でスリークォーターからサイドスローにフォームを改造。20年8月に右肘頭の骨折が判明して育成契約になった。腕の位置をスリークォーターとサイドスローの中間に変えて再起を誓い、昨年8月に支配下昇格。一軍登板なしに終わり、同年オフに2度目の育成契約を結んだ。
今年は進退をかけたシーズンだった。2月の春季キャンプから実戦で結果を残し続け、3月11日に支配下へ再昇格。シーズンに入っても開幕から9試合連続無失点と抜群の安定感で7試合連続ホールド。勝負どころで抑え続け、「8回の男」と首脳陣の信頼をつかんだ。
取り戻しつつある安定感
しかし、相手も当然研究してくる。ゴールデンウィークは試練の時期になった。4試合連続失点で外角の直球を痛打される場面が目立った。この4試合で計9失点を喫し、防御率は0点台から6点台に悪化。それでもファームに降格しなかったのは首脳陣の期待の表れだ。鍬原も意地がある。今月8日のヤクルト戦(東京ドーム)では5回二死二塁のピンチで登板。
山田哲人を149キロの直球で中飛に仕留めると、回をまたいだ6回も無失点に。チームは敗れたが、8ホールド目をマークした。10日の
DeNA戦(新潟)も7回に救援登板して三者凡退で2試合連続無失点と安定感を取り戻している。
他球団のスコアラーは鍬原の状態について、こう分析する。
「常時150キロ近い直球は強さがありますし、カットボール、シンカーを織り交ぜられるとなかなか打てない。痛打を浴びた時期がありましたが、相手打線が勢いに乗っているときでしたしね。外角中心の投球パターンが多いですが、内角も使えるようになると打者は踏み込めなくなる。守護神の大勢と共にポイントになる投手だと思います」
苦労を重ね、一軍で投げられる喜びは誰よりもかみしめているだろう。ここから真価が問われる。
写真=BBM