「延長戦で完全試合を達成」は皆無

5月6日の阪神戦で9回まで完全投球ながら延長10回に安打を打たれ、大記録を逃した大野雄
ノーヒットノーランはプロ野球で95度を数える。もちろん完全試合もノーヒットノーランに含まれ、2022年4月に
ロッテの
佐々木朗希が達成したのは16度目の完全試合であり、94度目のノーヒットノーランとなる。つまり、5月6日の阪神戦(バンテリン)で
大野雄大は17度目の完全試合、95度目のノーヒットノーランを惜しくも逃したわけだが、「9回まで完璧に抑え、延長戦で完全試合を逃す」のはプロ野球2度目。宝石が貴重なのは美しいからではなく希少だから、ということを聞いたことがあるが、この考え方をすれば、16度もある完全試合よりも大野の投球は貴重だったことになる。
20世紀には1度もなかった“離れ業の中の離れ業”。第1号は2005年8月27日、
西武の
西口文也が
楽天戦で“達成”したものだ。もちろん大野と同様、9回まで“完全試合”。ただ、味方の打線も苦しみ、試合は延長戦に突入、10回表の124球目を
沖原佳典に右前打とされた。サヨナラで完封勝利となったのも共通している。西口は約3カ月前の05年5月13日の
巨人戦、さらには02年8月26日のロッテ戦でも9回二死からノーヒットノーランを逃しており、「あと1人でノーヒットノーラン」というのが2度というのも、なかなか貴重だ。ちなみに、「延長戦に突入した末の完全試合」というのは1度もない。
同じ“未遂”では、ノーヒットノーランよりも“貴重”なのが無安打“有”失点完投だ。1安打でノーヒットノーランを逃す1安打完封は少なくないが、これは「相手を無安打に抑えながらも失点して完投」するもので、平成と令和の時代には1度もなく、1リーグ時代に1度、2リーグ制で1度と、西口と大野の“快挙”と同じ通算2度。1939年にイーグルスの
亀田忠、59年に阪神の
村山実が達成しており、いずれも勝利投手になっている。さらには、「継投で無安打に抑えながらも失点」した試合も1リーグ1度、2リーグ1度の2度。1度目はプロ野球で最初の無安打“有”失点試合で、やはり続くときは続くものなのか、亀田と同じ39年のことだ。このときは無安打ながら2失点を喫して、試合にも敗れている。
文=犬企画マンホール 写真=BBM