かつての「甲子園スター」たちが、プロ野球界で覚醒の時を迎えようとしている。ドラフト1位で入団しただけに素材は超一級品であることは間違いない。
清宮幸太郎、
根尾昂、
吉田輝星……彼らのさらなる活躍をプロ野球ファンは期待している。
※成績は7月20日現在 チャンスに強い打撃になれば…
・清宮幸太郎(日本ハム)
今季成績 79試合出場、打率.226、11本塁打、23打点
通算成績 309試合出場、打率.206、32本塁打、96打点
新庄剛志監督が就任し、全員平等にチャンスが与えられる「日替わり打線」で開幕から戦ってきたが、7月以降は中堅・
松本剛、左翼・
近藤健介、三塁・
野村佑希、遊撃・
上川畑大悟が上位打線で固定されるようになった。結果を出しているから当然だが、この枠に入れるかのボーダーラインにいるのが清宮だ。
ドラフトで高校生最多タイの7球団が競合した和製大砲だが、昨季は一軍出場なし。今季は自身最多の11本塁打をマークして野球人生の岐路を迎えているが、求めているレベルは高いだけにまだまだ物足りない。今月18日の
西武戦(札幌ドーム)では「五番・一塁」でスタメン出場したが、得点圏に走者を置いた3度の打席で全て凡退。4打数無安打とブレーキになった。チャンスに強くなるように打撃を磨けば打点も増えて不動のクリーンアップになるだろう。
読者からの質問にプロフェッショナルが答える週刊ベースボールの「ベースボールゼミナール」で、元
巨人の
岡崎郁氏は「清宮選手がさらに成長するためには何が必要になってきますか」という質問に対して以下のように答えている。
「清宮選手が今後さらに成長するために必要なことですが、それは試合に出場し続けることではないでしょうか。とにかく一軍の試合で経験値をどんどん増やしていくしかないと思います。良かったときは起用されて、悪かったときは起用しない。これを繰り返していれば、いつまで経っても一皮むけることができません。言葉は悪いですが、清宮選手の打席を捨てる覚悟で新庄(剛志)監督が1年間使い続けることができるかどうかだと思います。
「ただ、こうは言っていますが、僕は日本ハムの人間ではありませんので、本当の清宮選手のことを知りません。打率や本塁打といった数字だけでは、彼の人間性や野球に対する姿勢をすべて理解することは不可能です。だから何とも言えないのが正直なところですが、もしチームの中で清宮選手をずっと見ている人たちが、簡単に言えば新庄監督が『こいつはモノになる』と思ったら使うべきだし、そう思わなかったら使わないべき。簡単な話だと思います」
シーズン最終戦まで一軍でプレーするために、1試合1打席もムダにできない。
衝撃の投手転向
・根尾昂(中日)
今季成績 11試合登板、0勝0敗1H、防御率1.93
通算成績 11試合登板、0勝0敗1H、防御率1.93
プロの世界では珍しい野手から投手への転向。しかもドラフト1位で野手として入団した根尾がシーズン途中に投手転向という決断は衝撃だった。
大阪桐蔭高で2年春、3年春の決勝では胴上げ投手になっているが、3年以上のブランクがある。投手として満足に練習していないため活躍に懐疑的な見方が少なくなかったが、マウンド上で見せるパフォーマンスは想像以上だった。150キロを超える直球とキレ味鋭いスライダーを武器に、11試合登板で失点は2試合のみ。いずれも最少失点に切り抜けている。7月1日の
阪神戦(バンテリン)では1点リードの5回二死一、二塁で27試合連続安打中だった
近本光司を内角高めの直球で詰まらせて三ゴロに。プロ初ホールドを挙げた。
楽天で監督経験がある野球評論家のデーブ大久保氏は週刊ベースボールのコラムで、「
立浪和義監督はすごい判断をしたと思いますね。みんながこの決断を賛成するとは思っていなかったはず。むしろ批判の嵐となることは必至で、それでも根尾がどうしたら羽ばたいてくれるかを第一に考えての選択だったのではないでしょうか」と称えた。
さらに「ただ忘れてほしくないのは、この投手転向を監督の独断でやったのではないということです。そこには多くのスタッフ、コーチの意見などが集約されていて最後の判断を監督が下しているはずです。そこには根尾が入団してから、いくつものデータがそろっているはずですから、裏付けもあったのだと思います。あとは根尾自身がどう輝けるかだと思います。やはり投手の投げ方と野手の投げ方は違います。そこを今からうまくいかに投手仕様に切り替えていくかだと思います。投手になることを決めたわけですから、いい投手になってほしいです。野手から投手転向はそう多くない。だからこそ、いい前例にしてほしいですね」と期待を込めている。
投手として新たな伝説を作れるか。
リリーフで輝けるか

日本ハム・吉田輝星
・吉田輝星(日本ハム)
今季成績 29試合登板、1勝3敗2H、防御率4.68
通算成績 39試合登板、2勝9敗2H、防御率6.90
救援という新たなポジションが「輝く場所」なのかもしれない。4月に9試合連続無失点を記録するなど救援では防御率3.33。一方で先発では4試合登板も5イニング投げ切れたことはなく、防御率7.53と厳しい結果となっている。「将来のエース」と嘱望され、本人も先発にこだわりがあるかもしれないが、救援で結果を残せば将来は守護神になれる逸材だろう。
2018年夏の甲子園で金足農高のエースとして秋田県大会から夏の甲子園準決勝まで10試合連続完投勝利をマーク。全国屈指の強豪校を次々に倒す快投で高校球界の主役になった。19年にドラフト1位で入団したが、プロの世界は厳しい。自慢の直球をはじき返され、プロ3年間は一軍に定着できなかった。だが、今年は明らかに昨年までの姿と違う。
伊原春樹氏は週刊ベースボールのコラムで、「2年目以降も一軍に定着できなかったが、今季はストレートの質が向上したように思う。入団当初はボールが“素直”な感じだったが、今は“重さ”が感じられる。春季キャンプでは現役時代、『火の玉ストレート』と称される剛球を投じていた元阪神の
藤川球児氏にアドバイスを仰いだというが、それも奏功しているのだろう。さらに、どのような成長曲線を描くか、非常に楽しみだ」と評価している。
代名詞の直球を磨き、球界を代表するリリーバーになれるか。
写真=BBM