打線をけん引する存在として開幕四番に座った男。果たして、その後も四番の座を守り続けているのか、それとも現在では別の役割を任されているのか。セ・リーグ6球団「開幕四番」の現在地を探る。 ※記録は8月15日現在 読売ジャイアンツ
今季も1年を通して不動の四番、と思われていた。岡本和真の出だしは好調だった。3、4月は打率.264、10本塁打、25打点で自身初の月間MVPに輝くなど、スタートダッシュを決めたチームをけん引。しかし、好調は続かず7月は打率.222、1本塁打、3打点。さらに7月下旬には新型コロナウイルスの陽性判定で離脱を余儀なくされた。復帰後も思うように状態は上がらず、8月11日の
中日戦(バンテリン)では四番の座を
中田翔に譲り、六番で先発出場。四番以外でスタメンに名を連ねるのは約3年ぶりだった。
ヤクルト・
村上宗隆の爆発もあって史上3人目となる3年連続での本塁打&打点の2冠は絶望的だが、何としてもここから意地を見せたい。
横浜DeNAベイスターズ
打線の中心にはいつも牧がいる。今季開幕からチーム最多の88試合に出場し、すべて四番で先発。4月に新型コロナ陽性判定を受け離脱したが、あとは7月に守備の際痛めた左足首の影響でベンチを外れた2試合のみ。日々入れ替わる打順の中、牧の四番だけは揺るがない。ここまで本塁打(17)、打点(62)、得点(47)でチームトップの成績を残している。昨季、ルーキー史上初のサイクル安打、
清原和博以来の新人年で3割20本塁打を記録した実力を、今季も余すことなく発揮している。今年受けたヒーローインタビューはすでに9回を数え、完全にチームの顔だ。歴史を振り返っても四番を固定できるチームは明確に強い。24歳の若武者が打線をけん引している。
阪神タイガース
プロ2年目で開幕から四番を任されているのが佐藤輝明だ。豪快なスイングからの強烈な打球スピードはメジャー級。当たれば確実に飛んでいくのだが、打率が2割5分台で16本塁打、60打点は四番としては少し寂しい数字だろう。8月12日から中日3連戦(京セラドーム)では無安打に抑えられ、チームも3タテ。
大山悠輔、
近本光司、
中野拓夢という主力が新型コロナ感染で離脱の中、孤軍奮闘しているが、それでもなかなか状態が上向いてこない。後半戦一気に上昇した阪神だが6連敗中と今が踏ん張りどころ。佐藤輝のバットに期待するしかない。
東京ヤクルトスワローズ
ヤクルト・村上宗隆
「すべてのタイトルを獲れるなら獲りたい」と開幕前に口にしていた村上宗隆。残り試合が40試合を切った8月15日現在、41本塁打、100打点で2冠王、打率もリーグ3位の.320の堂々たる成績を残しており、令和初の三冠王獲得が視野に入っている。5月には2試合連続満塁弾にサヨナラ弾など、試合を決める一発をコンスタントに放ち、それ以降も6月度、7月度と2カ月連続での月間MVPを受賞。チームが新型コロナの集団感染で主力が大量離脱と苦しい時期も四番としてチームを引っ張ってきた大黒柱である。プロ野球新記録の5打席連続本塁打を成し遂げるなど、その能力が底知れぬ22歳。連覇へ向けた終盤戦、これからも自身のバットでチームを勝利に導く。
広島東洋カープ
主砲・
鈴木誠也がメジャー・リーグへ移籍し、春季キャンプからルーキーの
末包昇大を四番候補として首脳陣は考えていたが、やはりルーキーには重荷だった。オープン戦終盤から四番を務めたのが松山竜平。そのまま開幕四番の座に就いた15年目のベテランはDeNAとのオープニングゲームで2安打を放ち、11対3の大勝に貢献。翌日の同カードでもマルチ安打。幸先のいいスタートを切ったが、開幕5戦目の阪神戦(マツダ広島)から新外国人の
ライアン・マクブルームが四番の座に。その後、松山の役割は代打がメーンとなる。7月22日のヤクルト戦(神宮)では9回一死一塁に代打で打席に立ち、
スコット・マクガフから勝利を決定付ける2ラン。シーズン最終盤、一つでも順位を上げるためにベテランの力は必要だ。
中日ドラゴンズ
チームが最下位に沈んでいる要因の一つが、主砲のダヤン・ビシエドの不振だろう。昨オフ、新たに3年契約を結んでドラゴンズ愛を貫き、これでしばらく四番に悩むことはないと思われたものの、7年目の今季は開幕から低空飛行が続いた。
立浪和義監督も「ほかにいない」と四番を任せてきたが、5月に入って六番に下げるなど手を打った。安打はそれなりに放ってはいるが、欲しいのはここぞの1本。いわゆる“四番の仕事”が例年に比べて圧倒的に少ない。逆にあそこでビシエドが打っていれば……という試合が多いのだ。投高打低のチームだけに四番の役割はより大きく、だからこそ終盤戦はビシエドのバットがチームのカギを握っている。
写真=BBM