甲子園で2本目のアーチ
近江高・山田は海星高との3回戦で、7回裏二死満塁からグランドスラムを放った
2022年夏の甲子園の記憶。
一人、選手を挙げるとすれば、近江高・
山田陽翔(3年)の右に出る者はいない。
海星高(長崎)との3回戦(8月15日)で先発すると、7回表一死一、二塁のピンチでは連続三振。自らの手でリズムを引き寄せると、2対1で迎えた7回裏二死満塁から左越えの満塁弾を放った。さらにこの回、1点を追加して主導権を握ると、山田は7回1失点でマウンドを後続に託した。9回表の幕切れはライトの守備位置。近江高は7対1と快勝して、2年連続でのベスト8進出を決めた。「近江劇場」の主役は、言うまでもなく、エースで四番の主将・山田である。
甲子園での本塁打は、昨夏の準々決勝以来、2本目。投げては2年夏、3年春、今夏と3季連続甲子園で積み重ねた白星は、節目の10勝に到達した。以下が、勝利した試合である(カッコ内は勝利数)。
【2021夏】準決勝敗退
[1]1回戦 日大東北(福島)
先発5回2失点 68球
[2]3回戦 盛岡大付(岩手)
先発6回2失点 89球
[3]準々決勝 神戸国際大付(兵庫)
先発6回2失点、3番手で1/3無失点 96球
【2022春】準優勝
[4]1回戦 6−2長崎日大(長崎)
先発13回2失点(完投)165球
[5]2回戦 7−2聖光学院(福島)
先発9回2失点(完投)87球
[6]準々決勝 6−1金光大阪(大阪)
先発9回1失点(完投)127球
[7]準決勝 5−2浦和学院(埼玉)
先発11回2失点(完投)170球
【2022夏】準々決勝進出
[8]1回戦 8−2鳴門(徳島)
先発8回2失点 113球
[9]2回戦 8−3鶴岡東(山形)
先発9回3失点(完投)149球
[10]3回戦 7−1海星(長崎)
先発7回1失点 114球
大観衆は自然と山田を後押し
7回表一死一、二塁ピンチを連続三振で脱するとマウンド上で雄叫び。集大成の夏、山田のボルテージは高まる一方だ
この日で聖地13試合目。完全に甲子園を味方につけている。マンモススタンドに詰めかけた3万人のファンは、山田の投打に熱視線を送った。昨夏は4強、今春のセンバツでは594球の力投も実らず、無念の準優勝。この2年間の山田の歩んできた背景を知るだけに、大観衆は自然と背番号1を後押しする。本塁打を受けた試合後のコメントがまた、山田のキャラクターが見え、親近感を覚えるのだ。
「甲子園が力を貸してくれたというのもあるんですけど、一番はスタンドからの応援だったり、球場が一丸となったんじゃないかと思います」
気になる球数制限(1週間で500球以内)は、仮に決勝(8月22日)まで勝ち進んだ場合、この日(15日)の3回戦の114球はカウントされない。つまり、泣いても笑っても最大3試合(準々決勝、準決勝、決勝)で、山田は500球を投げられる。とはいえ、先を見る余裕はない。言うまでもなく、一戦必勝である。
近江高は中2日の準々決勝(18日)で、高松商高(香川)と対戦する。注目の右スラッガー・
浅野翔吾(3年)との「主将対決」が控える。真っ向勝負とフルスイング。今夏のハイライトの一つとなるのは間違いない。
写真=田中慎一郎