大物選手とトレードになった有望株が、実際に成功する確率は20パーセントくらい。それくらい確率が低い中でもスターになるために移籍をいい機会に努力をしていく[写真はクルーバー]
毎年トレードデッドラインで、ベテラン選手の交換相手に、プロスペクト(若手有望株)たちが移籍する。今年はナショナルズからパドレスに、
フアン・ソト外野手、ジョシュ・ベル一塁手の2人がトレード。交換相手はロバート・ハッセル外野手(メジャー全体で21位のプロスペクト)、ジェームス・ウッド外野手(88位)、ジャーリン・スサナ投手(100位圏外)、プラス今季メジャー・デビューしたばかりのマッケンジー・ゴア投手、CJ・エイブラムス遊撃手で、2人は1年前はトップ10に入るトッププロスペクトだった。
レッズの
ルイス・カスティーヨ投手もマリナーズに移籍したが、交換相手はノエルビ・マルテ遊撃手(全体で17位)、エドウィン・アローヨ遊撃手(92位)である。この順位はMLB公式サイトの最新のプロスペクトランキングの数字。ほかにも「ジ・アスレチック」や「ベースボールアメリカ」など複数の米メディアが折りに触れランキングを発表している。
ソトや
カスティーヨがどれだけ活躍するかは、今後メディアで大きく報道されるから分かるが、一方でプロスペクトたちのその後は、すぐに結果が出ないこともあり、しばしば忘れられてしまう。
実際のところ、彼らがメジャーに昇格し、成功したキャリアを送る確率はどれほどなのか。「ベースボールアメリカ」電子版が報じていた。01年から17年、676人のプロスペクトが移籍したが、そのうち143人が結果的にメジャー・リーガーとして成功できた。この場合の成功の定義は、少なくとも2シーズンでシーズンのほとんどをメジャーでプレーし、ベースボールリファレンスのWAR(そのポジションの代替可能選手に比べてどれだけ勝利数を上積みできたか)の数字がプラスの選手であること。
成功率は21.2パーセント。ただこの成功率は近年上昇傾向にある。01年から09年は16.1パーセントだったが、10年から17年の成功率は25.5パーセント。17年組については、パイレーツの
オニール・クルーズ、レイズのアイザック・パレデスらが、メジャーで活躍を始めたから、率は今後さらに上がる。
一方で全体の78.8パーセントは成功できないし、そのうち大半はメジャーに上がることすらできない。ジ・アスレチックは、今回のトレード戦線の勝者は大物を獲得したパドレスとともに、有望株をたくさん得たナショナルズやレッズだとしているが、最終的にどうなるかは今の時点では分からない。
掘り出し物はいつも意外な所から出てくる。コリー・クルバー投手はパドレスのドラフト4巡指名選手だったが、10年に三角トレードでインディアンズにトレードされ、以後2度のサイ
ヤング賞に輝き、通算WARは34.7である。とはいえこのトレード、その年であれば一番の大物左腕クリフ・リーが絡むような注目のトレードではなかった。
クルーバーも当時、トップ100に入るような有望株ではなかった。パドレスが獲得したオールスター外野手のライアン・ルド
ウィックは打率.228で1年後には再びトレードされた。獲得を進言したインディアンズのスカウトが優秀だったのである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images