菊池雄星は2021年オフ、FAになった。メジャー移籍時のマリナーズとの契約では、3年経過した時点で球団側と菊池側の双方にオプションがあった。いずれの側もオプションを行使しなかったのだ。労使交渉の難航でFA市場の動きが止まっていてが、今年3月14日にブルージェイズと3年総額3600万ドルで契約を交した。チームとしては昨季サイ・ヤング賞を受賞した左腕ロビー・レイと、チーム最多の14勝を挙げたスティーブン・マッツがFAで退団し、先発投手の補強を急務としていた。 悪循環に陥って

ブルージェイズの菊地
入団に際して菊池雄星は「すごく明るいチーム。世界一を狙っていると思うので、その力になれるように頑張りたい」と、力強く話した。マリナーズ時代の18から、
西武で着けていた16に背番号を変え、新天地でシーズンを迎えた。
ブルージェイズでのデビュー戦は開幕5試合目。4月12日のヤンキース戦だった。3回1/3を3失点。黒星を喫した。4月は4試合で0勝1敗、防御率5.52。最も長く投げたのが6回で、調子が上がらなかった。だが5月になると成績が上がる。5試合で2勝0敗、防御率2.36。二段モーションをやめ、昨季ピッチングの軸だったカットボールを封印して、安定した投球を演じたのだった。
ところがそのまますんなりとは進まない。6月に入ると再び安定感を欠いた。カットボールをやめた代わりに割合を増やした真っすぐを狙われた。慎重になると、制球が乱れた。
悪循環に陥り7月5日のアスレチックス戦では3回持たずに4失点で5敗目(3勝)。5四球2死球と大荒れで「ストライクを投げられない投手の後ろで守るのは、つらいものだ」とチャーリー・モントーヨ監督を嘆かせた。
直後に首の張りのため、15日間の負傷者リスト(IL)に入った。その間、スライダーの握りを変えるなど再調整を図る。チームではモントーヨ監督が7月13日に解任され、ジョン・シュナイダー・ベンチコーチが監督代行を務める体制に変わった。
菊池はマイナーでのリハビリ登板1試合を経て7月28日のタイガース戦で復帰。5回2安打1失点。しっかりストライクゾーンで勝負することができ、四球はひとつだけだった。
ここまで山あり谷ありの今季。真価が問われるのは後半戦だ。菊池にはプレーオフ進出に貢献する活躍が期待される。
『週刊ベースボール』2022年8月22日号(8月10日発売)より
文=樋口浩一 写真=Getty Images