若鷹が猛アピール
一軍でハツラツとしたプレーを見せている増田
混戦のパ・リーグで熾烈な優勝争いを繰り広げる
ソフトバンクが、危機的状況を迎えている。
柳田悠岐、
牧原大成、
周東佑京、
柳町達と主力選手たちが新型コロナウイルス陽性判定を受けて8月下旬に戦線離脱。チームにとっては窮地だが、ファームで鍛錬を積んだ若手たちが躍動している。8月23日の
楽天戦(楽天生命パーク)で
谷川原健太が4打数4安打4打点の大暴れ。15得点の猛攻で大勝すると、24日の同戦も1点差を追いかける4回に
増田珠の2点中前適時打、ドラフト2位ルーキー・
正木智也も左翼席にプロ初アーチで試合をひっくり返す。同点に追いつかれたが、延長11回に谷川原が決勝打の左犠飛を放って楽天を振り切った。
若手の活躍はチームの大きな活力になる。将来の主力として期待される中、
ヤクルト・
村上宗隆と同世代の強打者として注目されるのが増田だ。一軍での出場は2019年の2試合のみだったが、今季7月17日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)で4回に
エンニー・ロメロから右翼席に運ぶプロ初安打初本塁打。驚きの表情でダイヤモンドを1周すると、ベンチ前で尊敬する先輩・
松田宣浩のポーズ「熱男!」を拝借して一気にベンチが活気づき、逆転勝利を飾った。7月22日に登録抹消されたが、主力の大量離脱を受けて1カ月後の8月22日に再昇格。23日の楽天戦で猛打賞の活躍を見せるなど自慢の強打でアピールしている。
世代のトップランカー
増田は世代のトップランカーだった。長崎市内で生まれ育ち、「長崎シニア」で投手兼外野手として全国大会に出場。U-15野球日本代表に選出され、W杯で四番を務めた。名門・横浜高に進学後も1夏から「一番・センター」でレギュラーをつかむ。3年夏の神奈川大会で大会新の4戦連発を含む大会タイの5本塁打を記録。高校通算33本塁打の強打者はミート能力も高く、広角に安打を打ち分ける。
ソフトバンクにドラフト3位で入団して将来の主力選手として期待が大きかった。野球評論家の
伊原春樹氏も17年10月に週刊ベースボールのコラムで「(注目株は)
清宮幸太郎だけではない。今年の高校生野手のドラフト候補で言えば、
安田尚憲(履正社高)、
中村奨成(広陵高)、増田珠(横浜高)も楽しみだ。甲子園などでのプレーを見ていても、それぞれにセンスは感じる。この中でも個人的には増田が最も早く一軍でプレーが見られるように思う」と高く評価していた。
語っていた熱い思い
19年秋に右手首を手術して、半年間のリハビリ生活に励むなど紆余曲折を経たが、内野に挑戦するなど必死だった。増田は昨年3月に週刊ベースボールのインタビューで「もう1度骨が折れる夢を見たときなんかは、『俺、結構メンタル来てるな』とかは思ったりしましたけど(苦笑)。でも、そのときはそのときやなと思って。そして何よりも、野球が好きなんですよね(照笑)。しんどくても、根本に野球が好きという思いがあるので、約1年間にも及ぶリハビリにもめげなかったんだと思います。それに、野球がうまくなりたいとも常に思っている」と語っていた。
その上で、「負けられないという思いはもちろんあるんですけど、同世代や後輩たちと勝負している間は、松田さんをはじめ一軍の方たちとの差は埋まっていかないと思います。今レギュラーで出ている方たちと勝負ができるようになっていかないといけません」と熱い思いを口にしていた。
レギュラー獲りへ。プロ5年目の23歳は勝負の時を迎えている。
写真=BBM