チーム浮沈のカギを握る背番号16

早大・加藤は法大1回戦[9月10日]で8回4安打無失点の好投。開幕戦で勝利投手となった
「弔い」の1勝だった。
早大は開幕戦となった法大1回戦(9月10日)で2対0と快勝した。
9月7日に2005年から10年まで早大を率いた應武篤良元監督が死去した。64歳だった。
19年から母校を率いる早大・
小宮山悟監督は常日ごろから、1901年創部の野球部の歴史の重みを現役学生に説いている。野球部の発展に大きく貢献した先輩の悲しい知らせを受け、勝利で良い報告しようと、試合前に伝えた。
原動力となったのは先発した右腕・
加藤孝太郎(3年・下妻一高)だ。丁寧に低めにボールを集め、8回を4安打無失点。2点リードの9回は右腕・
伊藤樹(1年・仙台育英高)が締めた。加藤は通算3勝目を挙げた。
ワセダのエース番号は「11」。1960年秋の早慶戦6連戦で、逆転優勝へ導いた
安藤元博氏以降、主戦投手が背負うナンバーとして定着している。同秋、野村徹氏(元監督)が着けた正捕手を意味する「6」も、特別な背番号として、伝統が受け継がれている。つまり、精神面、実力的にふさわしい人材がいなければ、そのシーズンは空位。この秋、双方の背番号とも不在だった。
昨秋まで「11」を着けた
徳山壮磨(現
DeNA)が卒業し、今春も空位だった。小宮山監督は今秋の活躍次第では、来春に最終学年を迎える加藤に背番号「11」を託したいという意向を示している。
「いずれ着けてみたい思いはありますが、まだ力不足。力をつけていきたいです」(加藤)
加藤は控えめに語った。今春、エース格に成長し、早慶戦を迎えるまで、防御率1位(0.95)をキープしていた。しかし、慶大1回戦で5回5失点(自責4)と数字を落とし(1.67)、タイトルを逃した。1試合を投げ切るスタミナが課題だったが、今夏の南魚沼キャンプ(ベーマガスタジアム)での鍛錬を経て、その成果を開幕戦で披露した。
加藤は
ヤクルトファンであり、16年の東京六大学との記念奉納試合を神宮球場で観戦したのがきっかけで、同リーグでのプレーを目指した。大学進学を見据えて、茨城の県立進学校・下妻一高に進学。勉学との両立を実現させ評定4.6の優秀な成績により、指定校推薦で早大に入学した。意志がしっかりしており、それが、野球にもつながっている。
開幕前には「全5大学から勝ち星を挙げたい」と語っていた。20年秋以来の天皇杯奪還へ、背番号16がチーム浮沈のカギを握る。
文=岡本朋祐 写真=菅原淳