中日の未来を背負って立つ選手

現在、ショートでスタメン出場を続ける土田
中日が変革の時期を迎えている。高卒3年目の
岡林勇希が外野でレギュラーの座をつかむと、高卒2年目の
土田龍空も後半戦から遊撃の定位置を勝ち取っている。
土田の武器は高い守備能力だ。打球に対する反応速度が速く、守備範囲が広い。華麗な身のこなしと巧みなハンドリングは19歳とは思えない。課題の打撃も実戦を重ねることで成長の跡を見せている。8月19日の
ヤクルト戦(バンテリン)では同点の9回無死満塁で、セ・リーグを代表するセットアッパー・
清水昇から右前にはじき返すプロ初のサヨナラ安打。劇的な一打で、53歳の誕生日を迎えた
立浪和義監督を喜ばせた。21日の同戦でも同点の7回一死二塁で
木澤尚文から決勝打となる左前適時打。得点圏打率.323と勝負強さが光る。45試合出場で打率.257、0本塁打、10打点は十分に合格点が与えられるだろう。
「物怖じしない性格でプロ向きですね。ミスをしても切り替えが早い。
巨人の
坂本勇人も高卒2年目で遊撃のレギュラーをつかみましたが、たたずまいが重なる部分があります。中日の未来を背負って立つ選手になるでしょう」(スポーツ紙記者)
状態が上がらない京田

6年目の今季、苦しいシーズンを過ごす京田
土田に遊撃の定位置を奪われた形になったのが、プロ6年目の
京田陽太だ。1年目の17年に新人王を獲得するなど不動の遊撃手として活躍してきたが、近年は納得する成績を残せていない。打撃フォームの改造に取り組んだ今年も開幕から打率1割台と状態が上がらず、攻守に精彩を欠いた5月4日の
DeNA戦(横浜)で試合途中に名古屋へ強制送還。ファーム降格すると、6月に復帰したが結果が残せない。7月11日に登録抹消されると、1カ月後の8月11日に再昇格。名誉挽回のチャンスだったが、新型コロナウイルス感染で5日後に戦列を離れた。
喜怒哀楽を表に出さないプレースタイルだが、秘めた闘志は熱い。立浪監督が今季から新たに就任。京田は今年3月に週刊ベースボールのインタビューで、「(周囲の期待を)めちゃくちゃ感じています。地元の名古屋だけでなく、全国の野球ファンが期待している感じがします。監督就任直後の秋季キャンプも報道陣の数がすごかった。やっぱり違うなと。(立浪監督は)厳しいですよ。みんなピリピリしていますし、でもその分、締まって練習できています。たまにジョークも飛び出しますので、みんなそのギャップにやられています。選手も裏方さんもチーム全員が一丸となれるように気を遣ってくれていますし、そこは僕も見習わなければいけないと思っています」と意気込みを口にしている。
そして、全試合出場を目標に掲げ、「どこかの記事で読みましたが、監督が今の戦力でも十分戦えると言っていました。これは燃えましたね。選手にとって、これほどうれしい言葉はないと思います。うれしいのひと言です。やるしかありません」と熱い思いを吐露していた。
「背番号1の後継者」として
大きな試練を味わったシーズンだが、このまま引き下がるわけにはいかない。8日に
福留孝介がバンテリンドームで引退会見を行った際は
大島洋平、
大野雄大、
柳裕也、
阿部寿樹、
木下拓哉、
高橋周平、
祖父江大輔と共に会場に駆けつけ、福留に花束を渡した。「背番号1の後継者」としていろいろな感情が込み上げてきただろう。活躍した姿を見せることが恩返しになる。シーズンは残り少なくなかったが、意地を見せたい。
写真=BBM