強烈な輝きを放った昨年

昨季は高卒3年目で10本塁打を放ち、今季の飛躍が期待された林だったが……
「ポスト
鈴木誠也」の有力候補と期待されながら、まさかの今季一軍出場なし……。今月10日から開幕したみやざきフェ
ニックス・リーグに参加し、鍛錬の日々を送っているのが、
広島の
林晃汰だ。
高卒3年目の昨季は102試合に出場。5月中旬に新型コロナウイルスの感染拡大で主力が大量離脱し、巡ってきたチャンスをつかんだ。同月29日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)で2回に
美馬学からプロ初アーチを放つと、6月5日の
楽天戦(マツダ広島)で6回に
田中将大の内角高めの直球を右翼席へ。レギュラー格の選手たちが復帰以降もスタメンで出続ける。6月の月間成績は打率.344、2本塁打、17打点。四番に抜擢されるなど、若き和製大砲が強烈な輝きを放った。
7,8月は調子を落としたが、9月に球団歴代2位タイの8打数連続安打をマークするなど月間打率.301。10月21日の
ヤクルト戦(神宮)で2回に
小川泰弘から左中間に10号2ランを放ち、2ケタ本塁打に到達する。高卒3年目以内の2ケタ本塁打は12年の
堂林翔太以来9年ぶり。あこがれの先輩である鈴木誠也は高卒3年目で97試合出場し、打率.275、5本塁打だったことからも、記録に大きな価値があることが分かる。102試合出場で打率.266、10本塁打、40打点をマーク。飛躍のシーズンとなった。
鈴木誠也に学んで
昨オフ、鈴木がポスティングシステムでカブスに移籍する。昨季は試合前の打撃練習を行う際に同じ組で回るなど多くの時間を共有し、技術面、野球に向き合うストイックな姿勢を学んだ。林は昨年11月に週刊ベースボールのインタビューで、「打球スピードも違いますし、飛ばす距離も違いますし、全部が『すごいな』と思いますので。全部が勉強になります。分からないところがあっても聞けて。何と言うんですかね、とにかく『すごい選手だな』と思いながら、一緒にやらせていただいています。打撃面だけでなく、守備面でもいろいろ話をしていただけますし、すごく野球人として尊敬できます」と敬意を口にしていた。
ファームでも聞かれない快音
チームを長年支えていた鈴木が退団したことで、林には「不動の四番」として期待がかかったが、待ち受けていたのは大きな試練だった。2月の春季キャンプから打撃で試行錯誤を重ね、持ち前の豪快なスイングが鳴りを潜めた。オープン戦も打率.192と精彩を欠き、開幕二軍スタート。焦りがあったのかもしれない。打撃のメカニズムが狂ったままだった。直球に差し込まれ、快音が聞かれない。ファームで打順が四番から下がり、八番を打つことも。一軍の三塁は
坂倉将吾が119試合でスタメン出場を果たし、明暗が分かれる形となった。林はウエスタンリーグで102試合出場し、打率.217、2本塁打、27打点。一軍からお呼びの声が掛かることのないまま、シーズンを終えた。
昨年は華やかなスポットライトを浴び、今年はプロの厳しさを味わった。歯車が狂うと、一軍昇格すら叶わない。同世代の
小園海斗、
羽月隆太郎が一軍でプレーしている姿を見て悔しくないはずがない。
来年から
新井貴浩新監督が就任する。決して器用ではないが猛練習で球界を代表する選手に上り詰めた指揮官の現役時代を林も知っている。再びはい上がり、レギュラーを奪取するためにも、このオフは練習漬けの日々になりそうだ。
写真=BBM