攻守走で抜群の野球センス
巨人からドラフト1位指名された浅野
5年ぶりのBクラスに沈んだ巨人の光が、ドラフト1位指名で当たりクジを引き当てた高松商・
浅野翔吾だ。
高3夏の甲子園で初戦・佐久長聖戦で2打席連続アーチ、準々決勝・近江戦では
西武からドラフト5位指名を受けた
山田陽翔からバックスクリーンに2ランをたたき込むなど、猛打賞の活躍で一気に知名度を上げた。高校通算68本塁打を放ち、攻守走で抜群の野球センスを誇る。
12球団が熱視線を送る中、特に熱心だったのが巨人だった。9月28日に球団事務所でスカウト会議を開き、浅野を1位指名する方針を固めた。異例の公表は、クジで競合する球団を減らしたい思惑もあっただろう。1位指名は11連敗中、
原辰徳監督も6連敗中だったが、ドラフト当日に
阪神との競合で原監督が見事に当たりクジを引き当て、満面の笑み。浅野は「伝統あるジャイアンツから指名をいただいてうれしい」と会見場で感謝を口にした上で、「簡単に試合に出られるとは思っていないが、イチから球界を代表する選手になりたいし、応援が多くて熱心なジャイアンツファンばかりでなく、プロ野球ファンから愛される選手になりたい」と誓った。
巨人の“高卒ドライチ”スラッガー
巨人にドラフト1位で入団して本塁打を量産した松井
巨人が獲得した高校生スラッガーで浮かぶのは、
松井秀喜(現ヤンキースGM特別アドバイザー)だ。ドラフトでは巨人、阪神、ダイエー、
中日の4球団が1位指名で競合。13年ぶりに巨人の監督に復帰した当時の
長嶋茂雄監督(現巨人終身名誉監督)が当たりクジを引き当てた。その後の活躍は周知の事実だ。巨人で本塁打王、打点王を3度、首位打者1度と球界を代表する選手に駆け上がり、ヤンキースでも主軸として活躍。「ゴジラ」の愛称でファンから愛され、日米通算507本塁打をマークした。
岡本和真も高卒ドラフト1位のスラッガーだ。智弁学園で高校通算73本塁打を記録し、巨人に単独1位指名で入団する。プロ4年目の18年に一軍定着し、打率.309、33本塁打、100打点と大ブレークすると、同年から5年連続30本塁打をマーク。2020、21年には本塁打、打点王の2冠に輝いている。
クリーンアップを打つ強打者の系譜として、浅野も将来を嘱望されるが、アマチュア野球の担当記者は「松井、岡本のような長距離砲ではない」と指摘する。
「パンチ力は大きな魅力ですが、浅野は攻守走3拍子そろったプレースタイルで打率3割、30盗塁をコンスタントにマークできる選手だと思います。選球眼も優れていますし、左打者ですが
丸佳浩にタイプは近い。丸も高卒で
広島に入団し、俊足巧打で外野のレギュラーをつかんだので、良きお手本になると思います」
アルトゥーベのように
低身長ながらメジャーで強打を発揮するアルトゥーベ
浅野はドラフト前に週刊ベースボールのインタビューで、こう語っている。
「高校では長距離打者と言われてきましたけど、もし、上の世界でできれば、中距離打者で本塁打も打てて、安打を打ち、チャンスメークが仕事になる。自分より体の大きな選手に対し、真正面から立ち向かうよりは、自分のずっと生き残れる道を進んでいこう、と思います。目指すタイプはアストロズのアルトゥーベ選手。なぜ、あの体格でも飛ばせるのか、動画を見て一から研究していきたい」
ホセ・アルトゥーベは身長168センチとメジャーで非常に小柄だが、首位打者を3度、盗塁王を2度獲得し、シーズン最多安打を4度記録。30本塁打以上も2度達成している。浅野も身長171センチとプロで小柄な部類に入るが、無限の可能性を秘めている。
写真=BBM