荒れ球も武器にして

今年は自身初の2ケタ勝利の期待がかかる今井
12球団で唯一、2月6日からキャンプインした
西武は
松井稼頭央新監督が就任し、新たなスタートを切る。
正捕手で攻撃の軸でもあった
森友哉が
オリックスにFA移籍したのは大きな痛手だが、全員でカバーするしかない。今年も昨年同様に投手を中心に守り勝つ野球になるだろう。先発陣は昨季2ケタ勝利をマークした
高橋光成、
與座海人、
ディートリック・エンスに加えて救援から先発転向した
平良海馬、
松本航と能力の高い投手たちがそろう。2年目左腕の
隅田知一郎、
佐藤隼輔も先発ローテーション争いに食い込んでくる。その中で、エース格として稼働してもらわなければ困る投手がいる。昨季9試合の登板に終わった7年目右腕・
今井達也だ。
スポーツ紙記者は「今まで2ケタ勝利を1度もマークしたことがないのが不思議なぐらい。今井の持っている能力を考えれば15勝はできるし、西武のエースの枠を超えて球界を代表する投手にもなれる」と期待を込める。
最速159キロの直球に、スライダー、チェンジアップ、カーブ、さらに平良直伝のカットボールも大きな武器になっている。すべての球が一級品だが、課題は再現性だった。制球難を克服するため、
岸孝之(
楽天)、
ダルビッシュ有(パドレス)にそっくりなフォームで投げるなど試行錯誤を重ねた。投球フォームが見るたびに変わっていた時期があったが、それでも抑えられるのが今井の能力の高さを示している。
昨年は右内転筋の張りで開幕に間に合わず、その後もファームで左足首を捻挫して長期離脱。一軍合流したのは7月だった。投げた9試合はすべて3失点以下で、8試合は6イニング以上。制球は定まっていると言えないが、荒れ球も武器になっていた。8月26日のオリックス戦(京セラドーム)では同学年の
山本由伸と投げ合い、9回10奪三振2失点。144球の熱投で、延長10回表にチームが勝ち越したことで4勝目をマークした。
山本由伸を超える投手に
今井は昨年の開幕前に週刊ベースボールのインタビューで、理想の投手像について「日本球界でトップの投手になること」とした上で、こう続けている。
「オリックスの山本投手なんてすごい。たくさんいい投手がいる中で同学年がタイトルを独占する活躍をしています。もちろん悔しさもありますし、負けたくないというか、もっともっと頑張らないといけない、と。僕もあれぐらいの投手にならないとチームの優勝はないと思っているので。自分がこういう投手になりたいという姿もはっきりしてきたので、そこにたどり着くにはどうすればいいか。そう考え始めてから、自分の考え方が固まってきたというか、定まってきました」
山本は2020、21年と2年連続「投手5冠」に輝き、球界を代表する投手に上り詰めた。親交が深い今井も思うところがあるだろう。球界No.1投手へ、超える壁は高いが大きなモチベーションにもなる。
新たな背番号で心機一転
今年は新たな気持ちで臨む。入団以来、着けていた背番号「11」から、昨季限りで現役引退した
武隈祥太氏の背番号「48」に変更した。「11」はエースナンバーと呼ばれる番号だ。前例のない変更に驚きの声が上がったが、尊敬する先輩の背番号を継承したいという思いが強かった。不器用だが純粋で真っすぐな性格も今井の大きな魅力だ。
背番号「48」で進化した姿を見せることが、武隈への恩返しになる。自身初の2ケタ勝利は通過点。4年ぶりのV奪回へ、今井の覚醒は不可欠だ。
写真=BBM