守備位置で集中しているのは中堅手
歴代1位の1065盗塁をマークしている阪急・福本
盗塁、バント、ヒットエンドランなどの緻密なプレーを重ねて得点を稼いでいく、いわゆるスモールベースボール。前回は“犠打王”たちを集めてみたが、犠打は地味な印象があるプレーなのは確かだろう。一方、盗塁には華やかさがあり、勢いがあり、ビールを片手に観戦しているファンにもキチンと訴えかけてくれる(?)。同時に、故障のリスクが大きいプレーでもあり、今回は通算盗塁とシーズン盗塁で上位にランクインしている韋駄天たちでオーダーを構成してみたい。
通算、シーズンともに、監督を経験している選手も散見される。そのうち、率いたチームが頂点に立ったのが通算14位タイ、363盗塁を残した
西村徳文だ。2010年、
ロッテを率いてペナントレースを3位で終了。以降クライマックスシリーズに日本シリーズと勝ち続けて日本一に輝き、「史上最大の下剋上」といわれた。ちなみに、西村と通算盗塁で並んでいるのが現在は
西武を率いている
松井稼頭央で、日米通算では西村を上回る。もし今後、西武を日本一に導くことがあれば変わってくるが、今回は西村の率いたロッテのベストオーダーをベースに、韋駄天たちを集めてみよう。
ある程度は予想できていたことではあるが、守備位置で集中しているのが中堅手。続いて二遊間が多い。中堅を守れる韋駄天は左翼や右翼でも機能するだろうが、どうしても主観が入ってしまいそうなので、ひとまず従来のルール同様、どんなに盗塁を決めていようと、ラインアップに並べるのは通算、次いでシーズンの順で盗塁が多い選手。そこに戦略や忖度はなく、自動的かつ機械的な作業に徹したい。これで控えに回った選手たちも、代走からでも活躍しそうな韋駄天ばかりであり、まさに機動力野球といえる打線となった。
1(遊)
広瀬叔功(南海)
2(中)
福本豊(阪急)
3(二)
金山次郎(
中日ほか)
4(一)
飯田徳治(南海ほか)
5(左)
松本匡史(
巨人)
6(右)
柴田勲(巨人)
7(指)
張本勲(東映ほか)
8(捕)
古川清蔵(阪急ほか)
9(三)
石井琢朗(横浜ほか)
実際のベストオーダーは?
柴田は歴代3位の通算579盗塁をマークしている
通算およびシーズン1位の福本豊、通算2位の広瀬叔功、同3位の柴田勲、いずれも中堅手。広瀬と柴田は福本に弾かれるも、広瀬は本職の遊撃、柴田はV9が始まった1965年に右翼手としてベストオーダーに並んでおり、その守備位置で打順に入る。これで自動的に広瀬、福本が一、二番となった。一方、広瀬が遊撃に回ったことで通算5位の
高橋慶彦(
広島ほか)、シーズン4位の
河野旭輝(阪急、現在の
オリックスほか)に同5位の
木塚忠助(南海ほか)ら遊撃手たちが控えに。中堅は通算9位に並ぶ
呉昌征(
阪神ほか)に
赤星憲広(阪神)ら虎の韋駄天、柴田の右翼は通算23位で現役の
西川遥輝(
楽天)がバックアップする。外野は盤石だ。
二塁には通算6位の金山次郎が入り、通算7位の
大石大二郎(近鉄)が惜しくも控え。通算13位ながら堅守で負けていないのが
高木守道(中日)だ。長距離砲の印象が強い一塁にも堅守を誇る通算8位の飯田徳治がいて、南海(現在の
ソフトバンク)黄金時代と同じ四番打者に。貴重な左翼手がシーズン6位、セ・リーグではトップの松本匡史で、“青い稲妻”と“赤い手袋”の五、六番が守っても福本の両翼に。韋駄天タイプは好守を兼ね備えていることが多いことから、指名打者は少数派。通算27位の張本勲が繰り上がって打線に並んだ。
盗塁のイメージが少ない捕手だが、通算12位で中堅手の古川清蔵は戦中、1942年は正捕手。意外と少なかったのが三塁手で、通算16位の石井琢朗が遊撃手に専念する前のポジションで九番に入った。
「史上最大の下剋上」を超える勢いがありそうな打線に見えるが……。では、続きはファンの皆様の夢の中で。
(ロッテ2010年のベストオーダー)
1(遊)
西岡剛 2(中)
清田育宏 3(二)
井口資仁 4(一)
金泰均 5(左)
大松尚逸 6(右)
サブロー 7(指)
福浦和也 8(捕)
里崎智也 9(三)
今江敏晃 文=犬企画マンホール 写真=BBM