途中出場で結果を残して

クリーンアップの一角として中日打線の中で本領を発揮しつつある細川
環境の変化は、大きなチャンスだ。昨オフに初の取り組みとなる現役ドラフトで移籍した選手たちの活躍を見て、そう感じる野球ファンは多いだろう。
楽天で伸び悩んでいた
巨人・
オコエ瑠偉はリードオフマンとして打線を牽引。
ソフトバンクで登板機会が少なかった
阪神・
大竹耕太郎は安定した投球で先発ローテーションの一角に。巨人で一軍に定着できなかった
広島・
戸根千明は貴重な左のリリーバーとして、腕を振り続けている。
そして、この男も新天地で素質開花の時を迎えようとしている。中日の
細川成也だ。
DeNAから現役ドラフトで移籍。得点力が課題のチーム事情で、強打が魅力の細川にかかる期待は大きかった。春季キャンプでは
和田一浩打撃コーチの指導の下、夜遅くまでバットを振り込む姿があった。
立浪和義監督に「春季キャンプのMVP」と高く評価され、開幕一軍の切符をつかむ。途中出場で結果を残すと、4月11日の広島戦(バンテリン)からクリーンアップに定着し、23日の阪神戦(バンテリン)では、1点を追いかける5回二死一、三塁の好機で右中間突破の逆転2点適時二塁打。この一打が決勝打になった。
ここまで16試合出場で打率.346、0本塁打、6打点。移籍後初アーチはまだ出ていないが、二塁打が7本と長打は出ている。26日の広島戦(マツダ広島)で3回一死三塁から左越え適時二塁打を放つなど、今季6度目のマルチ安打で勝利に貢献。安打数は18本で、2019年にDeNAでマークした自己最多の16安打を早くも超えた。
DeNAでは一軍定着できず
DeNA在籍時は将来を背負う長距離砲と嘱望された。明秀学園日立高からドラフト5位で入団すると、高卒1年目の17年10月3日の中日戦(横浜)で一軍初出場。今回の現役ドラフトで入れ替わりとなった左腕・
笠原祥太郎から、バックスクリーンに3ランを放った。プロ初打席初アーチの鮮烈デビューを飾ると、翌4日の同戦でも決勝ソロを放ち、高卒新人では2リーグ制以降では初の2試合連続本塁打を記録。当時DeNAの
アレックス・ラミレス監督が「まるで
アレックス・カブレラ(元
西武ほか)のようだ。彼は一軍でも40本塁打を打つポテンシャルがある」とその才能に惚れ込んでいた。
ファームでは格の違いを見せていた。19年から4年連続2ケタ本塁打を放ち、新型コロナ禍で試合数が短縮された20年には64試合出場で打率.318、13本塁打、53打点をマーク。本塁打王、打点王、最高出塁率(.448)の3冠に輝いたが、一軍に定着できない。昨年は開幕一軍の切符をつかんだが、18試合出場で打率.053、1本塁打、1打点と結果を残せず。スポーツ紙記者は「DeNAは外野陣の層が厚く、細川に多くのチャンスがあるわけではない。本人も置かれた立場を自覚していたでしょう。ただ結果を出そうと精神的に余裕がないからか、思い切りの良さが消えていた。このまま『二軍の帝王』で終わるのはもったいない選手なのですが……」と複雑な表情を浮かべていた。
DeNAの外野陣は
佐野恵太、
桑原将志、
オースティンに加えて
大田泰示、
楠本泰史、
関根大気、
神里和毅、
蝦名達夫も控えていた。細川は今季もDeNAにいたら、チャンスが少なかっただろう。
「4打席任せてナンボの選手」
昨オフに現役ドラフトで中日への移籍が決まり、野球評論家の
高木豊氏は期待を込めていた。
「細川成也も大きな戦力になりそうです。中日の課題は言うまでもなく得点力。長打力も不足していますから、一発が魅力の細川は打ってつけのチームに移籍したと思います。中日の外野陣は
岡林勇希、
大島洋平が当確の上、新助っ人の
アキーノに
アルモンテ、
鵜飼航丞もいますからレギュラー争いのハードルは高いですが、できれば外野の一角を担ってほしい。右の代打の一番手になるのかもしれませんが、細川は4打席を任せてナンボの選手。代打のタイプではなく、スタメン起用が結果を残せるとは思いますが……」
立浪監督も、細川の打撃に光るモノを見出したのだろう。不動の主軸を長年張っていた
ダヤン・ビシエドを押しのける形で一塁のレギュラーに定着している。本職の外野と違って不慣れな部分もあるが、このチャンスをつかめば野球人生が変わる。プロ7年目の24歳は、ドラゴンズブルーのユニフォームで大ブレークなるか。
写真=BBM