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【高校野球】“デビュー”前の1年生70人で奏でた『レッツゴー習志野』 新たな世代へと引き継がれた「美爆音」

 

未知なる挑戦の場


千葉県大会準決勝。一塁応援席では習志野高吹奏楽部による大演奏が繰り広げられた


 2023年春の千葉県大会。応援席のブラスバンド演奏は人数制限なしで、声だし応援も解禁。習志野高吹奏楽部は19年以来、従来のスタイルでの応援準備を進めていた。

 4月30日。市船橋高との準々決勝(ゼットエーボールパーク)に臨むはずだったが、雨天中止となった。午前9時開始の第1試合に合わせて習志野市内の学校を早朝に出発したが、途中で連絡が入り、バスは折り返したという。3学年で演奏する機会が消滅したのである。

 習志野高は順延となった5月1日に勝利して、4年ぶりの4強進出を決めた。準決勝は同3日(千葉県野球場)に組まれた。

 準決勝当日、吹奏楽部は4日の名古屋での演奏会(2、3年生の103人)に備えたリハーサル日だった。野球部は4年ぶりの関東大会出場をかけたセンバツ8強・専大松戸高との大一番。吹奏楽部内で何度も協議した末、石津谷治法顧問が「応援しよう!」と、1年生70人を県大会準決勝へ派遣すると決めた。難しい決断であり、未知なる挑戦の場であった。

 海老澤博顧問は言う。

「1カ月前までは、中学生。例年は5月、1年生による演奏会で『デビュー』するんです。その舞台にも立っておらず、いきなり野球応援。本来であれば、先輩の動きを見よう見まねで覚えていくんですが、今回は過去にないチャレンジになります」

 1年生は試合までの2日間、2、3年生の力も借り、朝練、放課後と猛特訓を重ねた。

 迎えた本番。3年生2人がサポートメンバーに回り、多くの卒業生が激励に駆けつけた。専大松戸高との準決勝は7回表を終えて、0対8と劣勢の展開だった。習志野高は7回裏の攻撃で2得点以上を挙げないと、大会規定により、コールドゲームが成立してしまう。

 海老澤顧問は7回表、小栗千波顧問と話し合った。この試合、習志野高は大きなチャンスがなく、名物応援歌『レッツゴー習志野』を演奏するタイミングがなかった。7回裏、2人目の打者が主将・日下遙琉(3年)であり「ここが、勝負どころ」(海老澤顧問)と判断。日下のヒッティングテーマのイントロ後に『レッツゴー習志野』を投入すると決めた。

 1年生70人による大演奏は、海老澤顧問が言う「音圧」があった。この回、3人で攻撃が終わり、試合は終了した。麦わら帽子をかぶった海老澤顧問は、この一戦を総括した。

「勝てば関東大会出場で、神奈川に乗り込むはずでしたが……。応援できなかった2、3年生の熱い思いを背負い、1年生はよく練習しましたし、頑張ってくれたと思います」

 伝統の習志野サウンド「美爆音」は、新たな世代へと引き継がれた。名古屋の演奏会から戻った2、3年生は、大きな舞台を経験した1年生の急成長ぶりを実感するはずである。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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