今年は春先から好調
チャンスメークに走者をかえす役割もこなす近本
5月26日現在、2位・
DeNAに5ゲーム差をつけ、首位を快走する
阪神。切り込み隊長として牽引しているのが、
近本光司だ。
25日の
ヤクルト戦(神宮)では同点の8回に勝ち越しの3号右越えソロ。同点に追いつかれたが、延長10回二死から中安打で出塁すると二盗に成功。好機を作り、大山の押し出し四球で決勝点のホームを踏んだ。
近本と言えば、スロースターターのイメージが強い。3、4月の月間成績を見ると、2021年が打率.222、2本塁打、7打点。昨年が打率.231、0本塁打、3打点と春先は調子が上がらず、気温の上昇と共に安打を量産していた。だが、今年は違う。3、4月に打率.333、2本塁打、14打点の好成績をマーク。チャンスメークするだけでなく、36打数18安打で得点圏打率.500と驚異的な勝負強さで、ポイントゲッターとして稼働している。
今年は
木浪聖也ら下位打線が出塁し、好機で打順が回ってくる場面が多い。近本が走者をかえすことでどこからでも点が取れる切れ目のない打線を実現している。一番打者でありながら44試合出場で25打点をマーク。貧打が課題だった阪神はリーグトップの182得点を叩き出しているが、一番打者として近本の貢献度は非常に高い。5月に入っても安打を積み重ねて打率.318、3本塁打と申し分ない活躍だ。
同僚のアドバイスで
近本は打撃好調の要因について、5月中旬に週刊ベースボールのコラムで秘話を明かしている。
「チームメートの熊谷(敬宥)の言葉も大きかったんです。『チカさんは、ポイントは深いほうがいいと思っていませんか? 左の良い打者って、みんなポイントが前だと思います。逆に右バッターはポイント近いですよ』って。あいつめちゃくちゃ野球が好きで、勉強していて、ベンチから試合を見ているから、僕のこともよく分かっているみたいなんです。その助言を意識し『追い込まれていてもポイントを前にしていればファウルにできるな』と」
「その結果、ポイントを後ろにしていたときのほうが、ボール球に手を出しやすいことに気が付きました。つまりボール見過ぎることで、判断を誤ることがあったんです。それならポイントを前にしておいて先に書いたストライクゾーンのスキャンを生かした上で『打てるボール』を選択し打っています。打席では、そういう余裕ができてきたので、4月は3割をキープできたのだと思います」
「近本のすごさは対応能力」
21年に最多安打(178安打)のタイトルを獲得し、盗塁王にも3度輝くなど実績は申し分ない。3月に開催されたWBCでは侍ジャパンの外野陣に
鈴木誠也(カブス)、
ラーズ・ヌートバー(カージナルス)、
吉田正尚(レッドソックス)、
近藤健介、
周東佑京、
牧原大成(
ソフトバンク)が選出され、近本は選出から漏れた。だが、近本が能力で引けを取るわけではない(※鈴木はケガで出場辞退し、牧原大成は大会途中に追加招集)。
他球団のスコアラーは「近本のすごさは対応能力ですね。穴がないので抑えるパターンを見つけるのが難しい。1打席目を凡打に仕留めても、2打席目で同じ攻め方をしたらアジャストしてヒットゾーンに打球を飛ばされる。盗塁に関してもただ足が速いだけでなく、走塁技術が高いので塁に出すとバッテリーは神経を使う。WBCには出場できませんでしたが、球界No.1のリードオフマンだと思います」と評価する。
今月24日に発表された「マイナビオールスターゲーム2023」のファン投票中間発表で、セ・パ通じて最多得票となる5万5596票を集めた。18年ぶりのリーグ制覇へ、近本が攻守でチームを引っ張る。
写真=BBM