社会人で150キロの大台突破

バイタルネットはENEOSとの開幕試合で入社3年目の江村が先発した[写真=BBM]
第94回都市対抗野球大会は7月14日、東京ドームで開幕した。熱戦の12日間。栄光の黒獅子旗をかけた優勝争いをリポートしていく。
オープニングゲームでは9年ぶり4回目の出場となる北信越代表・バイタルネット(新潟市)が前年優勝チームのENEOS(横浜市)に挑んだ。先発のマウンドには大卒3年目の左腕・江村伊吹(大東文化大)が上がった
今季の江村は自己最速となる152キロをマーク。北越高時代は138キロ、大東文化大では147キロが最速で、社会人1年目に150キロの大台を突破していた。
「高校時代からウエートトレーニングはやっていたのですが、大学に入って先輩から教えてもらったり、自分で勉強したりして上半身もしっかりと鍛えるようにしました」
体を鍛えて球速がアップし、さらにブリッジも取り入れたという。
「体の可動域が広がりますし、身体操作の訓練にもなっています」
エースとしてチームを引っ張る立場となり、北信越地区二次予選では昨年の代表・ロキテクノ富山との準決勝で先発。7回途中まで投げて4安打2失点(自責点0)の好投で、昨年の代表チームを撃破する原動力となった。佐藤英司監督(東農大)は「昨年に比べると、カウントが悪くなったときでも粘れるようになり成長していると感じます。また、練習に取り組む姿勢も素晴らしいので、本戦出場が決まってすぐに『都市対抗の先発は江村で』と考えていました」と信頼を寄せている。
収穫と課題を糧にして
こうして迎えたENEOSとの開幕試合。「初戦の先発は自分しかいないだろうと早くから思っていたので、緊張しませんでした」と、初回は先頭打者に対し得意のストレートを投げ込み、3球目には150キロを記録。二番・川口凌(法大)には148キロの真っすぐをアウトローに決め、見逃し三振を奪うなど三者凡退の素晴らしいスタートを切った。
すると、バイタルネットは2回表に2点を先制したが、直後の大事な2回裏。5四死球を与え、押し出しと犠飛でノーヒットながら2点を奪われて同点に追いつかれてしまった。
「東京ドームの固いマウンドは反発力があって好きだったんですが、軸足がうまくはまらなくてコントロールを乱してしまいました」
それでも3回裏は先頭打者にヒットを打たれたものの四番・山崎錬(慶大)を143キロの真っすぐで空振り三振。五番・
度会隆輝(横浜高)はアウトコースへボールになるスライダーでまたも空振り三振に切って取り、無失点。この回で降板となったが、3回を投げて1安打2失点。三振は4つ奪ってみせた。
試合は3対3の6回裏、
小豆澤誠(上武大)の3ランなどで一挙6点を勝ち越したENEOSがその後も追加点を挙げ、10対3で勝利。バイタルネットは初戦敗退となり、悲願の大会初勝利はお預けとなった。江村は試合後「ドームで投げられたことが収穫。普段はあまりない18時からの試合を経験できたので、今後のコンディショニングに生かしたいです」と語った。この収穫と課題を糧に、秋の社会人日本選手権や、来年の都市対抗へ向かう。
取材・文=大平明