敵地開催では2007年以来2度目の王座
侍ジャパン大学代表が7月15日にアメリカから帰国した。第44回日米大学選手権で2大会連続20度目の優勝。敵地開催では1年生投手として活躍した早大・
斎藤佑樹(元
日本ハム)を擁した2007年以来2度目の王座だ。
なぜ、完全アウェーでも、難しいとされる勝ち越しができたのか。3つの要因がある。
【1】強じんな精神力
26人のメンバーを束ねた中島大輔主将(4年・龍谷大平安高)は「敵地で勝つ難しさを実感しました。ナイトゲームのほか、雨が降って、夜にも関わらず2~3時間待つ。調整の難しさに直面しましたが、今後の野球人生に生かしていきたい」と語った。また、慶大・廣瀬隆太(4年・慶應義塾高)は「厳しいコンディションの中で野球をする上で、結果を残せたのは自信になりました」と笑顔を見せた。投手は使用球、マウンドの違いなど、日本とは異なる環境にも見事に順応してみせた。
日本は第1戦で先勝も、2、3戦目を落とし、アメリカの王手をかけられた。しかし、ここから第4、5戦で勝利して逆転優勝を飾った。大久保監督は明かす。
「第3戦後に移動日があったんですが、『自分たちの野球をやろう』『普段通りのプレーをやってくれ』と言いました」。主将・中島は「あの移動日が、気持ちを切り替える上では大きかった。次に向かって一つになれた」と、空き時間をうまく利用したのである。
【2】データ野球
チームを率いた大久保哲也監督(九産大監督)は対アメリカの情報収集に、感謝を示した。
「直前の台湾との5試合の資料で、打者の傾向をつかむことができた。投手は川村コーチ(卓、筑波大監督)がデータを集め、イメージができた。実際に対してみないと分からない点もありますが、まったくデータがなかった状況でしたので、非常に助かりました」
【3】安定感抜群の投手陣
5試合で15失点、自慢の投手陣が実力を発揮した。大久保監督は言う。
「第2、3戦を落としましたが、3試合を終えて、アメリカ打線の特徴が見えてきた。高めのボールを振ってくれる。そこでファウルなどでカウントを取って、低めのフォーク、チェンジアップで落とす。第4、5戦ではその配球を実践できたのは良かったです」
先発、救援で計3試合を投げ、11回で自責点1の青学大の右腕・下村海翔(4年・九州国際大付高)が最高殊勲選手賞を受賞した。
「日本の打者は2ストライクからファウルして粘るが、アメリカの打者は追い込まれてからでも振ってくる。日本の場合は困ったときの低め、と言われますが、アメリカの打者にはバットが届くから、低めで勝負はできない。大久保監督が言われたように、高めのコースに意図的に投げたら、良い結果になりました」
短期間の中でも、しっかり相手打線を分析し、成果を出したのだ。頭をフル稼働させた大学ジャパンは「心技体」において、タフだった。
文=岡本朋祐 写真=BBM