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【高校野球】8回コールドで5回戦進出の向上 応援団、吹奏楽部、チアダンス部の三位一体となった応援が力に

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今春から解禁された「声」で圧倒


向上高の応援団長・西松は試合の前後、スタンドの関係者に向かってあいさつ。直立不動から、感謝の姿勢がにじみ出ている


 今春の神奈川県大会で印象的なシーンがあった。グラウンド整備が終わった6回表、向上高の応援スタンドから『栄光の架け橋』の大合唱だ。控え部員による応援は、統率が取れていた。今春から解禁された「声」で、圧倒していたのである。主将・遠藤稔弥(3年)は「鳥肌が立った。力になる。神奈川で一番だと思います。感謝の気持ちしかありません」と、控え部員へメッセージを送っていた。

 1年生が本格的に加わった夏になり、100人を超える応援はさらにパワーアップ。団長を務めるのは、西松聡一郎外野手(3年)だ。

「春の県大会では立候補しました。その後、夏のメンバー入りをかけて練習に励んできましたが、20人の背番号を手にすることはできませんでした。メンバー発表後、主将の遠藤が涙ながらに『応援団長を頼む!』と、推薦を受けたんです。光栄なこと。春以降、練習試合では声出しキャラでAチームに帯同し、代打でも何度かチャンスをいただきました。恩返しを込めて、今度は応援団長として、チームの勝利に貢献したいと思いました」

 吹奏楽部、チアダンス部との合同練習を経て、夏の神奈川大会では全力応援を展開した。

 伊志田高との4回戦(7月16日)では、吹奏楽部105人を動員。部長の鳥本椛さん(3年)は「音質は優しく、ブレンド感があり、さらに迫力あるサウンドを求めています。心をそろえる。曲の立ち上がりを大事にしてきた」とこだわりを語る。猛暑でも「野球部に華をそえる演奏」と、用意した15曲を披露。7月24日に控えるコンクール地区予選前の校内合宿3日目で、野球応援にも情熱を傾けた。

向上高は伊志田高との神奈川県大会4回戦で勝利。一塁側スタンドでは一体感のある応援を披露していた


 チアダンス部も22人が、リズミカルな動きを見せた。昨年は全国4位と躍進した強豪であり、キレッキレのダンスを披露。部長の真間心葉さん(2年)は言う。「吹奏楽部の迫力ある演奏に合わせ、元気を出して、笑顔で、選手に力を送り届ける」。応援団、吹奏楽部、チアダンス部の三位一体となった応援で、向上高は8回コールド(7対0)で5回戦進出を決めた。

 西松団長は試合前、試合後にスタンドの保護者、OB、学校関係者に丁ねいにあいさつ。深々と一礼する姿から人柄が伝わってきた。

 5回戦は昨夏の4回戦で敗退した横浜創学館高が相手だ。「涙を流した昨年の先輩の分まで、グラウンドの選手たちと一緒に戦います。目標は甲子園初出場。ですが、目の前の一戦一戦を大切に戦っていきたい」(西松団長)。ベンチ入りのメンバーが一生懸命プレーするのは、当たり前である。控え部員を見れば、野球部の「体質」がはっきりと見えてくる。123人の大所帯である向上高は細部まで教育が行き届いている。思わず、応援したくなる野球部。スタンドを見れば、一目瞭然である。

文=岡本朋祐 写真=BBM

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