監督時代とは真逆

『つじのじつ話』
ベースボール・マガジン社から前
埼玉西武ライオンズ監督、
辻発彦氏著の『つじのじつ話』が発売された。
現在、ご本人による2つのサインお渡し会が企画され、7月25日には『ジュンク堂池袋店』(完売御礼!)、8月6日には福岡の『丸善博多店』(まだ若干余裕あります!)で開催予定となっている。
ユニークなタイトルだが、これは編集部からの提案ではなく、辻さん自身がマネジャーさんと相談して決めたものだ。
監督時代の背番号もあって85のストーリーで構成されたものだが、今回はその第8話を抜粋してみよう。
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選手時代の僕を知っている人は、笑顔が多く、選手にツッコミを入れている『監督・辻発彦』を見て意外に思っていたはずです。
現役時代の僕は真逆でした。練習中もそうですが、グラウンドで笑うことはまずありません。常に厳しい顔をし、誰かが手を抜いたプレーをすれば注意をし、試合後のロッカールームで怒鳴ったこともあります。
守備に就くとき、守備からベンチに戻るときもスタンドを見る余裕はないくらい必死でした。若い選手からしたら近寄りがたい雰囲気があったと思います。
西武ライオンズ時代の後輩・
工藤公康君(前
福岡ソフトバンクホークス監督)に言われたことがありますが、肉離れをしたとき、「試合を休みたくない。なんとかしてください」とトレーナーにお願いし、強烈な治療をしてもらったことがあります。
そのときトレーナールームから聞こえた僕の絶叫に、彼は「ここまでして試合に出続けるのか」と鳥肌が立ったと言いました。
ファンの方々の間でも「辻は笑わない」というのが定説になっていたようです。現役時代、女性のいる飲み屋に行き(たまたまですよ!)、そこにいた西武ライオンズファンの女性から「辻さんって笑うんですね」と驚かれたこともあります。
ですから、僕の監督就任が決まった際、3年連続Bクラスと低迷していたチームを厳しく引き締めていくと思っていた人は多いようです。
確かに就任会見を見たら、そう思われるかもしれない。今でもYouTubeで見ることができますが、かなり顔がこわばって、笑顔もまったくない。ただ、あれは「これから厳しくやっていくぞ!」と思って怖い顔をしていたわけではありません。
はっきり言えば緊張です。初めて一軍監督という重責を任され、しかも、久びさにたくさんのカメラ、
大勢のメディアの前で話すわけですから仕方ないですよ!
あのときも、その後もですが、僕は監督だから厳しくしなきゃとか、偉いんだとはまったく思っていません。目線は常に選手と同じ高さです。それは最後までずっと変わりませんでした。