自らの役割を全う

中日の絶対的守護神・マルティネス。攻略困難な右腕だ
抑えとして活躍し続けることは非常に難しい。球界を代表する守護神として通算227セーブをマークしている
DeNA・
山崎康晃は防御率4.46と不安定な投球が続き、7月中旬に中継ぎに配置転換。昨季37セーブをマークして新人王に輝いた
巨人・
大勢は右上肢のコンディション不良で6月30日に登録抹消され、ファームで調整している。
広島・
栗林良吏、
阪神・
湯浅京己も痛打を浴びる登板が続き、守護神から外れることに。その中で、抜群の安定感が際立つのが中日の
ライデル・マルティネスだ。
チームは最下位に低迷しているが、自身の役割を全うしている。今季は32試合登板で自責点ゼロ、防御率0.00。リーグ2位の23セーブをマークしている。5月3日の阪神戦(甲子園)で今季初黒星を喫したが、
佐藤輝明の二ゴロを二塁・
福永裕基がトンネルし、代打・
原口文仁の左前打で打球を処理した
大島洋平がファンブルするなど拙守に足を引っ張られたことを差し引かなければいけない。
193センチの長身から投げ下ろす最速161キロの直球に150キロを超えるスプリットを織り交ぜて三振の山を築く。他球団のスコアラーは、マルティネスについてこう評する。
「
ソフトバンクの
ロベルト・オスナ、
リバン・モイネロと並んで最も攻略困難な投手の1人でしょう。マルティネスは球が速いだけでなく制球も良いので自滅しない。以前は走者を出した時に神経質になりリズムが悪くなっていたが、今は落ち着いて投球を組み立てている。どう攻略するかというより、9回に登板させないような試合展開にすることが重要です」
育成契約からはい上がる
キューバの国内リーグでプレーしていた右腕は、2017年2月に中日と育成契約を結んだ。快速球を武器に18年4月に支配下に昇格。フィールディング、制球力など課題を一つずつ克服することで安定感が増していった。直球一本やりだったスタイルは、スプリットを習得したことで投球の幅が広がった。20年10月2日のDeNA戦(横浜)で自己最速を更新する161キロを計測。同月17日の広島戦で24イニング連続奪三振をマークし、1968年の
江夏豊(阪神)を抜くセ・リーグ新記録を樹立した。昨年は自己最多の56試合登板で4勝3敗39セーブ5ホールド、防御率0.97を記録して自身初の最多セーブ投手に輝いた。
制球力の重要性
マルティネスは20年9月に週刊ベースボールのインタビューに応じた際、制球力の重要性を強調していた。
「勝てる投手というのはスピードが速いというよりは、コントロールがいいと思う。もちろんスピードも大事だけれど、どんなに速くても甘く入れば打たれてしまうから」
「スピードはそれほど重要じゃないよ。160キロを出してもチームが勝てるわけではないから、別にたいしたことじゃない。大事なのは何キロを投げるかではなく、どこに投げるか。ただ、160キロを出せた理由を考えるなら、今年はウエート・トレーニングに力を入れてやってきたからだと思う。とても力がついたし、特に下半身の安定感が増したのは感じている。だから160キロが出たんじゃないかな」
失敗を引きずらないのも、一流の投手の証だ。今季は5月3日の阪神戦で初黒星を喫したが、続く6日の巨人戦(バンテリン)で通算100セーブを達成した。2年連続出場となった今年の球宴では本拠地・バンテリンドームで登板した1戦目に、自己最速タイの161キロを計測。球場がどよめいた。きっちり無失点で戻ってきたのはさすがだ。
21年オフに3年契約を結んだため、来季も中日でプレーする。絶対的守護神を擁していることは、大きなアドバンテージだ。まだ26歳と若い。マルティネスが中日で「胴上げ投手」として、マウンド上で喜びを爆発させる日は訪れるだろうか。
写真=BBM