ほぼ無名だった男がプロの扉を開くまで

『侍ジャパン戦士の青春ストーリー 僕たちの高校野球3』
現役プロ野球選手たちの高校時代の軌跡を辿る『僕たちの高校野球』。待望のシリーズ第3弾となる『侍ジャパン戦士の青春ストーリー 僕たちの高校野球3』がベースボール・マガジン社から発売になった。ここでは掲載された7選手の秘蔵エピソードの一部を抜粋し、全7回にわたって紹介していく。第2回は
ソフトバンクの
近藤健介。数ある高校の中から横浜高を選んだ理由とは?
想像と違った寮生活
プロ野球選手になる。
近藤健介にとってそれは「将来の夢」という漠然としたものではなく、必ず実現させる明確な目標だった。千葉県出身の近藤が、全国の中でも最も激戦区とも言われる神奈川県にある横浜高への進学を希望したのも、そのためだった。
「プロに行ける可能性が高い高校に行きたいと考えた時に、横浜高しかないと思いました」
中学時代は通っていた中学校の軟式野球部に所属し、シニアなどの硬式出身ではなかった近藤は、当時はほぼ無名の存在だった。そのため、スポーツ推薦ではなく、一般入試を受けて入学した、いわば叩きあげの選手だった。
高校入学後は寮生活を送った。聞けば、近藤が想像していたような厳しいルールはほとんどなく、「まるで実家にいるような感じだった」というほど、リラックスできる生活だったという。加えてもともと料理が好きで得意だった近藤は、寮の食事がない休日にはパスタやチャーハンなどを自分で作り、チームメートにふるまうこともよくあったという。
近藤が入学した2009年、2学年上には
筒香嘉智、同学年には後に一緒にプロ入りする
乙坂智がいた。そんな中、近藤は早くから台頭し、すぐにAチームのメンバーに入った。横浜高で部長、コーチと40年以上も指導者を務め、多くのプロ野球選手を育成した小倉清一郎氏も、中学時代の近藤についてはまったく知らなかった。しかし、素質の高さは高校入学後に見てすぐにわかったという。
「野球関係者から私に教わりたくて横浜に入りたいと言っている中学生がいると。名前を聞いても全然知らなかった。ただ高校に入ってきて実際に見たら、グラブさばきもいいし、バッティングも良かった(小倉氏)」
高校野球とは何か?

高校時代は主にキャッチャーとして、攻守でチームの要を担った
甲子園優勝の夢こそ叶わなかったが、多くのことを経験した高校3年間について、近藤はこう振り返る。
「仲間同士が一つになって、同じ目標に向かって突き進んだあの3年間は、自分にとって財産。高校野球でしか味わえない貴重な経験だったと思います。特に小倉先生からは細かく指導していただいたおかげで、プロに入ってからも知らなくて戸惑ったことは一つもありませんでした。今、こうしてやっていけているのは、横浜での3年間のおかげです」と恩師への感謝の言葉を紡いだ。
また「高校野球とは?」という問いに、近藤はこの言葉で締めくくった。
「プロになる、ならないは関係なく、高校時代の経験は必ずその後の人生につながっていきます。だから辛いこともたくさんあると思いますが、仲間たちと一緒に頑張って乗り越えてほしい」
明日は「
源田壮亮」編です。