相手との消耗戦に屈していた慶大

慶大は法大4回戦[9月26日]を2勝1敗1分で勝ち点を奪った。堀井監督は確かな手応えを感じている
東京六大学リーグは2勝先勝の勝ち点で争われる。第3週の慶大対法大のカードは、4回戦にまでもつれた。
1勝1敗で迎えた3回戦は0対0のまま、連盟規定により、延長12回引き分け。昨今のアマチュア野球、国際試合においても、延長10回以降のタイブレーク(無死一、二塁からの継続打順)が多く採用されているため、「スコアレスドロー」はむしろ、新鮮に感じた。
しかし、現場は大変である。法大3回戦後、慶大・堀井監督は本音を漏らした。
「さすがに、12回で決着がつくだろうと……。明日(4回戦)は15回(1試合開催のため)でしょう……。法政さんと比べると、投手の数が足りない(苦笑)。力のあるチームは(4回戦に突入しても)良いでしょうが……」
3回戦は中1日で先発した右腕エース・外丸東眞(前橋育英高)が11回、142球を投げた。1回戦では7回途中99球。慶大は法大4回戦を終えると、中3日で東大1回戦が控えており、外丸に無理をさせるわけにはいかない。堀井監督は投手起用に頭を悩ませていた。
今春、慶大は勝ち点3の3位。明大戦は1勝1敗1分の4回戦、法大戦は1勝1敗の3回戦の末に、勝ち点を落としていた。つまり、最後は相手との消耗戦に屈していたのである。
今秋の開幕前、主将・
廣瀬隆太(4年・慶應義塾高)は「夏場は堀井監督に相当、走らされた。あのトレーニングが体力源になっている」と語っていた。法大4回戦を前にし、堀井監督は「夏の成果を見せる」と意気込んだ。
「最後まで集中したメンタル」

6回表途中から救援して勝利投手となった谷村[左]と、6回裏に逆転適時打を放った本間[右]。2人が勝ち点奪取の殊勲者となった
慶大は法大4回戦を逆転勝利(5対4)で、今季2つ目の勝ち点を挙げた。1対1の5回裏に一度は1点を勝ち越したが、6回表に3失点で逆転される厳しい展開も、あきらめなかった。6回裏二死一、三塁から廣瀨がバットの先に当てた打球が右前打となり、1点差。「ヘッドスピードが速いから、あの当たりでも内野の間を抜けていく。良いスイング。あらためて素晴らしいバッターだなと思いました」(堀井監督)。二死二、三塁で迎えた三番・本間颯太朗(3年・慶應義塾高)は「廣瀬さんが執念のタイムリー。タイムリーを打つならば『逆方向』と言われていたので」と、対左投手から、ボールに食らいついての右前打で2人の走者が生還し、慶大が逆転に成功した。
投げては必死の継投。救援で3試合、実績を残していた竹内丈(1年・桐蔭学園高)がリーグ戦初先発。4回途中まで粘投し、右サイドの木暮瞬哉(2年・小山台高)につなぎ、右腕・小川琳太郎(2年・小松高)は故障のアクシデントも、1年生左腕・渡辺和大(高松商高)から、4年生右腕・
谷村然(桐光学園高)へバトンが渡った。堀井監督は「4年生2人で締めてもらう」と、試合後にゲームプランを明かしたが、左腕・森下祐樹(米子東高)がブルペン待機も、谷村が6回途中から最後まで投げ切った。谷村は6回表の交代直後に2本の適時打を浴びたが、「打たれたことは仕方ない。目の前の打者をどう抑えていくか」と、7回以降は立ち直った。外丸を投入せずに勝ち切ったのは、大きな収穫だ。
2勝1敗1分。堀井監督は「壮絶な4日間だった」と振り返った。夏場の成果が出たかについて問われると「シーズン後半にどうなるか」と満足はしていない様子。そして言った。
「勝ったから言えるわけではありませんが、最後まで集中したメンタル。勝っても負けてもこういうゲームができれば、学生野球としては、春からの成長が見て取れる。仮に、このゲームを落としたとしても、学生にとっては良い経験だったと思います」
4試合で計606分。慶大はタフな形で「勝ち点」という最高のご褒美を手にしたが、東京六大学リーグの醍醐味である「対校戦」を学ぶ上でも、有意義な場となった。
文=岡本朋祐 写真=BBM