CSファイナル3連勝で日本シリーズへ

チームを13年ぶりの日本シリーズへ導いた岡田監督
18年ぶりのリーグ優勝を飾った
阪神が、2位・
広島と激突したCSファイナルステージでも3連勝で日本シリーズ進出と圧倒した。
3試合はいずれも先制点を許したが、試合をひっくり返す強さがある。第1戦は先制された直後の4回に
森下翔太の左越えソロで同点に追いつき、5回に
村上頌樹と
近本光司の連続適時打で3点を勝ち越した。村上は6回1失点と先発できっちり試合をつくり、7回以降は4投手の継投策で無失点に抑えて4対1と快勝。
第2戦も投手力で制した。初回に先制点を許したが、2回に
ノイジーの右前適時打と敵失が絡みすぐに追いつく。先発の
伊藤将司は制球がばらつき本来の状態ではなかったが要所をきっちり締め、7回1失点の好投。救援陣も踏ん張り、9回二死満塁から八番・
木浪聖也の右前打で2対1とサヨナラ勝ちを飾った。第3戦は七番・
坂本誠志郎が2本の適時打を放つなどこの日も伏兵が奮闘。自慢の救援陣が6回以降を無失点で切り抜け、4対2と競り合いを制した。
敵コーチが見た阪神の強さ
今年の阪神は一過性の勢いではなく、個々の選手が勝つための役割を遂行している。
巨人で今季打撃チーフコーチを務めた
大久保博元氏は実際に対戦し、その強さを週刊ベースボールのコラムで以下のように振り返っている。
「1年間戦って強いチームとそうでないチームとの差を感じたこともありましたね。もちろん、打撃の面では責任を感じていますよ、ということを前提で話します。やはり、強いチームは、守備の面で何かあったときに、内野陣がすぐ集まっているな、ということです。優勝した阪神は特にそこの傾向が強かったなあ、と。
大山悠輔、木浪聖也、
佐藤輝明、
中野拓夢の内野陣が、小さなことでも、誰かが投手の近くに行くとスーッとマウンドに集まっていました。
西武の黄金期のときの内野陣も、そういうことがよくありました」
「それはチームの意識が一つになっているという証拠でもあります。全員が勝利への意識が高いので、危険を察知して、自ら間(ま)を取りにいったりできるんです。巨人を含めBクラスのチームを見ているとそこが希薄に見えました。現場の選手たちは自分自身のことで必死なので、そういう部分に気が付かないことが多いんです。だからそこに助言をいれられるのは担当コーチです。ただ、それを担当コーチに言うと、私の越権行為になりますので、伝えていませんでした。それと先週もお話をしましたが、走塁の部分です。阪神の大山を例に出してしまいますが、四番があれだけ手を抜かずに走ったら、チームはいい方向に行きます」
チーム戦略の転換が奏功

阪神がFAで選手を獲得したのは18年オフの西勇が最後だ
阪神の強さの源として、チーム戦略の転換が挙げられる。かつてはFA補強に積極的なチームだったが、
金本知憲元監督の下で生え抜きの選手育成に重点を置く方針にシフト。
矢野燿大前監督も継承した。
青柳晃洋、伊藤将、村上、大山、佐藤輝、中野、近本と生え抜きが攻守の核になっている球団は強い。ドラフト戦略は高く評価されるべきだろう。最後にFA市場で獲得した選手は2018年オフの
西勇輝。昨オフは
森友哉(
オリックス)、
近藤健介(
ソフトバンク)に複数球団が興味を示したが、阪神は獲得レースに参戦しなかった。
今オフのFA市場でも球団の方針は変わらないだろう。
中田翔(巨人)、
山川穂高(西武)、
松井裕樹(
楽天)、
田口麗斗(
ヤクルト)、
加藤貴之(
日本ハム)、
山崎福也(オリックス)の動向に注目が集まるが、獲得を見送る公算が高い。
スポーツ紙記者は「チーム強化の観点でFA補強は即効性があるが、長期的視点で見ると若手の出場機会が失われるデメリットがある。今の阪神は投打で生え抜きのレギュラーが固まり、数年後の主力として期待される若手の成長株も順調に育っている。現有戦力で来季もリーグ連覇する力は十分に備わっている」と評する。
名将・
岡田彰布監督の下で黄金時代へ――。本物の強さを証明するため、38年ぶりの日本一を目指す。
写真=BBM