2018年には22本塁打をマーク

ソフトバンクの戦力構想から外れたが、ほかの球団で必要とされる可能性はある
2年連続リーグ優勝を逃し、
ロッテと対戦したCSファーストステージ第3戦(ZOZOマリン)で延長10回に3点のリードからサヨナラ逆転負けを喫したソフトバンク。その6日後に驚きのニュースが飛び込んだ。来季の戦力構想から外れた選手が10月22日に発表され、
森唯斗、
嘉弥真新也、
上林誠知の名が記されていた。
上林はかつて、希望の光だった。走攻守3拍子そろったプレースタイルで、長打力もある。高卒4年目の2017年に外野のレギュラーをつかみ、134試合出場で自身初の規定打席に到達。打率.260、13本塁打、51打点、12盗塁をマークした。強肩にも定評があり、10補殺は12球団最多だった。翌18年は全143試合出場で打率.270、22本塁打、62打点、13盗塁をマーク。14本の三塁打はリーグ最多で歴代4位タイの記録だった。
柳田悠岐、
今宮健太、
中村晃と共にチームを背負って立つ存在と目されていた若手成長株の野球人生に、試練が訪れたのが19年だった。4月17日のロッテ戦(ZOZOマリン)で右手甲に死球を受け病院で打撲と診断され、強行出場したが痛みが引かず、病院で再検査を受けたところ右手薬指の剥離骨折と判明。1カ月のリハビリを経て復帰したが、打撃の狂いを修正できない。99試合出場で打率.194、11本塁打、31打点と不本意な成績に。20年も3月の練習試合で死球を受けた影響で本来の輝きを取り戻せない。打率.181、6本塁打に終わり、翌21年も打率1割台に終わった。
「自分に厳しくし過ぎた」
上林は昨年3月に週刊ベースボールのインタビューで、当時についてこう振り返っている。
「『自分を信じ切れなかった』というところもあるのかもしれないです。やっぱりちょっと結果が出ないってなると、何かを変えようとしたりして。いろいろなことを試しているうちに自分を見失ってしまった」
「自分の中で納得いく打ち方ではないけど打ててしまう、ということがありました。そうすると、結果が出ているのに『これでいいのかな』となってしまう。プロの世界なので、結局は結果なんですけど、迷いがありましたね。それも、常にもっといける、もっといけるという思いが強かったからでもあるのかなと。自分に厳しくし過ぎたんですよ」
今季も打撃成績は伸びず
追いかける理想と現実のギャップに苦しんだ。昨年は春先から打率3割を超える打率で復活を予感させたが、5月上旬に試合前のシートノックで送球の際に転倒。右アキレス腱断裂でシーズン中の復帰が絶望となった。チームの核として期待された若手も、月日を経てチーム内での立ち位置が変わっていた。今季はスタメン出場が18試合にとどまり、代打、代走、守備固めと途中出場が
メインに。外野のレギュラー3枠ががっちり固まったわけではない。打撃でアピールすればレギュラー奪取の可能性があったが、56試合出場で打率.185、0本塁打、9打点と最後まで輝きを取り戻せなかった。
10年間プレーしたソフトバンクを退団したが、まだ28歳。同学年で同期入団の
森友哉(
オリックス)、
松井裕樹(
楽天)、
田口麗斗(
ヤクルト)はチームに不可欠な主力選手として活躍している。世代のトップランナーとして期待された上林に「このまま終わってほしくない」と感じるファンは多いだろう。
他球団の首脳陣は「持っている能力はすごい。トリプルスリーを狙える逸材だと思っていましたから。故障やいろいろなアクシデントが重なって負のスパイラルにしまったのかな……。でも野球に取り組む姿勢はストイックでスイングも相変わらず鋭い。環境を変えれば復活できる可能性はあるでしょう。まだ若いしね」と指摘する。
上林は現役続行の意向を示している、ロマン砲は新天地でよみがえるか――。
写真=BBM