戦前からライバル関係
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11月23日に「創立100周年記念 オール中京・オール東邦 野球大会」がバンテリンドームで開催される。左から中京大中京高・伊藤校長、梅村学園・梅村総長・理事長、東邦学園・榊理事長、東邦高・藤本校長[写真=BBM]
8つの深紅の大優勝旗、5つの紫紺の大優勝旗の各レプリカが一斉に並ぶのは壮観だ。
夏の全国選手権大会最多優勝校は中京大中京高の7度(大会最多78勝)、春のセンバツ最多優勝校は東邦高の5度(大会最多58勝)。高校野球界をけん引してきた、愛知の名門2校の学校創立は1923年。創立100周年記念行事として11月23日、「オール中京・オール東邦 野球大会」がバンテリンドームにて行われる(午前10時から大学・社会人で編成したOB戦、14時20分から高校生による現役戦)。イベントに先立ち16日、中京大中京高にて、記念野球大会開催記者会見が開かれた。
梅村学園の梅村清英総長・理事長(中京大学長)は「東邦さんとは時を同じくして1923年創立。歴史と伝統をつなぎ、100周年の記念行事でチャンスに恵まれたこと、開催できることをうれしく思います。高校野球ファン、卒業生が楽しんでいただける行事になることを祈っています」と喜びを語ると、高校生による現役戦は真剣勝負の場であると言及した。
「両校とも来春のセンバツ出場の可能性があれば良かったですが、残念ながらその資格を逃しました(中京大中京高は秋の愛知県大会3回戦敗退、東邦高は準々決勝敗退)。その悔しさを、記念野球大会に思いをぶつける格好のチャンス。実りのあることを期待します」
中京大中京高の前身である中京商の野球部は学校創立と同時に創部。学園創立者である梅村清光氏は野球を「校技」と指定し、強化を進めた。当時、過熱しつつあった中等学校野球界で、早くも愛知をリードする存在となっていた。東邦商は学校創立から7年後の1930年に創部。初代理事長の下出義雄氏は愛知一中(時習館高)時代に野球経験があるが、運動部の活動については、一流選手の育成よりも、全人教育を目指していたという。ブレない教育理念を掲げる一方で、学校経営者の立場もあった。周囲からの強い要望も受け、創部へと至った背景がある。東邦商はメキメキと力をつけ、中京商とは戦前からライバル関係となっていた。
こうした歴史的背景をくんで東邦学園・榊直樹理事長は言う。
「中京さんは高い壁。厚い壁。遠い目標であります。スタートが後塵を拝してきましたから、他の学校さんに負けても『中京さんには絶対に負けるな』と100年、進んできました。野球部は学校全体の力になっています。野球が学校を支え、生徒たちの人格を育成するのに役立ててきた。今回の行事が新たな100年の出発点になる。これからの100年も良きライバルとして歩んでいけたらと思います」
大会運営は生徒主体
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記者会見が行われた中京大中京高の玄関ホールには中京大中京高の深紅の大優勝旗[手前、夏最多7度、夏3連覇記念]と、東邦高の紫紺の大優勝旗[奥、春最多5度]が並んだ[写真=BBM]
記者会見が行われた玄関ホールには両校の優勝旗が並び、18、19日には一般にも公開される(10~15時)。中京商は1931~33年夏に史上唯一の3連覇を遂げているが、3連覇を記念した深紅の大旗が初披露。学校関係者によれば、戦時中に一度、消失したが、春夏連覇を遂げた1966年に再度、授与されたという。
記念試合は1万人の動員を想定しており、ゲームの合間には学童チームを対象としたキャッチボール体験、ダンス&バトントワリング、チアリーディング演舞、マーチングバンドの演奏と、アトラクションが盛りだくさん。大会運営は両校の生徒会、放送部、硬式野球部女子マネジャーと、生徒主体で行われる。
「多くの学園関係者が集うと聞いています。(両校)合わせて200年。内容はどこにもマネできないものになっている。価値のある大会になる」(中京大中京高・伊藤正男校長)
「大変、楽しみにしております。今回の開催にあたり『11月23日は、応援に行くよ!』と、OB・OGの反応がすごいんです。卒業生が集う一つの場ができて良かった。マーチングバンド部、バトントワリング部が1万人の前で演技を披露する。こんな機会は人生で一度あるかないか。ワクワクしています」(東邦高・藤本紀子校長)
東邦学園・榊理事長は会見冒頭で言った。
「目標に向かって切磋琢磨し、競い合うには、相手がいないと成り立ちません」
スポーツとは、勝ち負け競うのが醍醐味だ。「好敵手(ライバル)」と書いて「仲間」と読む。試合は審判員、対戦校がいなければ、成立しない。現役戦ではスタンドで学校応援も展開され、生徒たちは野球を通じ、愛校心を共有する。また、先人が築いてきた100年の歴史から、リスペクトの心を学ぶ場にもなる。
文=岡本朋祐