救援陣の屋台骨を支えていた右腕

今季も57試合に登板していた安樂だが……
ショッキングなニュースだ。
楽天の森井誠之球団社長が楽天モバイルパークで11月30日に会見を開き、チームメートへのパワハラ疑惑が報じられていた
安樂智大を自由契約にする方針を示した。アンケート結果をもとにヒアリングを行った結果、複数の選手がパワハラを受けたことが確認されたという。安樂には29日に自由契約の方針を伝えた。
今季57試合登板で3勝2敗10ホールド、防御率3.04をマーク。勝負の分岐点となる試合の中盤でマウンドに上がるケースが多く、首脳陣の信頼は厚かった。2021年には58試合登板で22ホールド、昨年も52試合登板で13ホールドと救援陣の屋台骨を支えていた。順風満帆だったわけではない。済美高で2年春に甲子園に出場して準優勝を飾ったが、全5試合登板で772球を投げたことが大きな波紋を呼んだ。ドラフト1位で入団後の数年間は度重なる故障で一軍定着できない時期が続き、「高校時代の登板過多」がささやかれた。
安樂は21年に週刊ベースボールのインタビューで、「僕も高校野球で終わってもいいと思ってやっていたし、あともう少しで手が届きそうなところで、手を伸ばさずにあきらめる程度の練習を積んできたわけではないので。そのために本当にいろんなものを犠牲にしながら練習してきましたからね。過去をさかのぼってもたくさん投げている方はいらっしゃいますし、注目される僕がダメなんです。そこでケガをしちゃったりプロに入ってからもケガが続いてしまったことで、そこを払拭できなかった」と振り返っている。
さらに「全然後悔なんかしたことないです。高校時代に投げ過ぎたから壊れたんだとか言われましたけど別にそういうわけじゃなくて、僕のケア不足であったり、高校時代はフォームの崩れに気がつかなかったり。簡単に言えば僕の技術不足。後悔は全然ないし、そういうことを言う人を見返したいという思いでやっていますね、今も」と語っていた。
投手陣が低迷した楽天
リリーバーで素質を開花させ、27歳と選手としても脂が乗り切る時期を迎えたが、常軌を逸した振る舞いで信用を失った。若手の手本にならなければいけない立場にもかかわらず、パワハラに及んでいたことが判明。楽天ファンのショックは大きい。
2年連続で4位に低迷した楽天は
石井一久監督が退任し、
今江敏晃監督が就任。最重要課題が投手陣の立て直しだ。今年のチーム防御率3.52はリーグワースト。2ケタ勝利を挙げた投手はゼロだった。さらに、長年守護神を務めていた
松井裕樹が海外FA権を行使してメジャー挑戦の意向を表明している。今季59試合登板で2勝3敗39セーブ8ホールド、防御率1.57をマーク。自身3度目となる最多セーブ投手のタイトルを獲得した。通算236セーブを記録している左腕が退団することで、勝利の方程式を再構築しなければいけない。
セットアッパーが手薄に

ルーキーながら51試合登板と奮闘した渡辺
新守護神の有力候補が
渡辺翔太だ。新人の今季は51試合登板で8勝3敗1セーブ25ホールド、防御率2.40をマーク。心身ともにタフでピンチを背負っても制球が乱れない。性格的にも抑え向きだ。ただ、渡辺が抑えに回るとセットアッパーが手薄になる。今季53試合登板で防御率2.28の好成績を残した
内星龍は来季の先発転向が決まっている。また、昨年リーグトップの61試合登板した
西口直人は今年9月にトミー・ジョン手術を受けたため来季は育成契約に。リハビリに専念する方針だ。
スポーツ紙記者は、「松井がメジャーに移籍し、安樂が自由契約になることでリリーバーの強化に動く可能性があります。他球団の構想外になった選手は次々に移籍先が決まっている。トレードが選択肢の一つとなるとなるでしょう」と語る。
今江監督の下で新たなスタートを切る中、投手陣をどのように再建するか。
写真=BBM