気になるグリップの位置

高卒4年目の今季、V奪回のキーマンとして期待される秋広
V奪回を狙う
巨人のキーマンとして、注目度が高いのが高卒4年目の
秋広優人だ。
春季キャンプでは、打撃練習で背番号「55」の大先輩である
松井秀喜臨時コーチ(
ヤンキースGM付特別アドバイザー)から助言を受ける場面が。グリップの位置がキャンプ当初に比べて左肩付近まで下がり、フリー打撃で力強い打球を放っている。
グリップの位置については、球団OBの
篠塚和典氏が昨年7月に週刊ベースボールの「連続写真に見るプロのテクニック」で指摘していた。
「少し気になるのは構えから振り出しにいくまでのグリップの位置、高さです。少し高過ぎるのではないでしょうか。この連続写真は一軍昇格直後のものですが、現在はさらに少し高くなっているように感じます。これだけ上背とリーチがあるのにグリップの位置が高いと、ボールとの距離があり過ぎてしまいます。まだフィジカル的に完成しておらず、スイングスピードも飛び抜けて速いわけはないので、対応が遅れてしまう可能性があります」
「やはり最初からグリップを肩のラインくらいにセットして、ボールを水平にとらえていくイメージを出したほうがよいでしょう。例えば
落合博満さん(元巨人ほか)がホームランを打つときのバットの軌道は低いところから低いまま、下から線でとらえていくイメージがありました。秋広選手もグリップの位置をイメージ的に低くすることで、もっとミート率を上げることができると思います」
イメージは中距離打者
球団歴代最長身タイの身長2メートルの恵まれた肉体には、無限の可能性が詰まっている。昨季は規定打席に4打席足りなかったが、121試合出場で打率.273、10本塁打、41打点をマーク。7月23日の
DeNA戦(横浜)では7回に
山崎康晃の151キロ直球を右翼席に叩き込み、4試合連続アーチを放った。日米通算507本塁打をマークした松井氏の後継者として期待されるが、他球団のスコアラーは意外な見方を示す。
「秋広のイメージは大砲というより中距離打者ですね。もちろん甘い球をスタンドに運びますが、それよりも器用な印象があります。変化球もきっちりコンタクトして、詰まっても逆方向に安打を打つ技術がある。手首をギリギリまで返さずバットの面で捉えている時間が長いので、差し込まれても打球が遊撃の頭を超える。21歳であの打撃技術をモノにしているのはすごいですよ。打席でのシルエットも含めて重なるのは
駒田徳広さん(巨人三軍監督)ですね。もちろん30、40本塁打を打つ可能性を秘めていますが、現時点では首位打者のタイトルが一番近いんじゃないですかね」
大きな可能性を秘めるスラッガー

巨人、横浜で通算2006安打をマークした駒田
巨人、横浜(現DeNA)でプロ20年間の現役生活を送った駒田氏は通算2006安打をマーク。191センチの長身で入団当初は長距離砲として期待されたが、広角に安打を打ち分けるミート能力が真骨頂だった。満塁で無類の強さを見せたことから付けられた異名が「満塁男」。決して長打力がないわけではない。92年に27本塁打を放つなど通算195本塁打をマークしている。
秋広の将来の打撃像についてさまざまな見方があるのは、それだけ大きな可能性を秘めている証しだろう。もちろん、打率、本塁打、打点とすべての部門でタイトルを狙える強打者に進化することが理想だ。
昨年6月に週刊ベースボールのインタビューで、「自分としては特にホームランを狙うわけではないんですけど、最高の結果がホームランだとは思っています。単打も長打も打てるバッターというのが、自分のタイプに合っているのかなと思いますし、ホームランを打てるに越したことはないと思うんですけど、狙ってしまって逆に打率が落ちてしまったりしては正解ではない。自分のできることを、精いっぱいのプレーを今はしたいなと思っています」と語っていたが、経験を積むことで思い描く理想形が変化するかもしれない。
写真=BBM