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【社会人野球】ENEOSの新たな主戦として期待される東山玲士 特殊な直球を武器に目指すプロ入り

 

数値以上の勢い


178センチ75キロ。堂々としたマウンドさばきが武器で、見た目よりも大きく見える[写真=BBM]


 社会人野球のシーズン幕開けとなるJABA東京スポニチ大会が、3月9日に開幕する。

 ENEOSの新たな主戦として期待されているのは、入社2年目の東山玲士(同大)だ。

「(フォームに)力感なく、強く、伸びのある真っすぐが、特殊だと言われています」

 入社1年目の捕手・菅原謙伸(明大)が目を丸くさせる。「見たことがないストレート。打者の手元でのホップが違う」。東山は楽天則本昂大が「理想の軌道です」と、自らの生命線としている。最速149キロも、数値以上の勢いが持ち味だ。科学的な根拠もある。

「(計測した)回転軸が横に寝ることがなく、真縦に回る。スピン量が多いようです」

 自らのスタイルを手にしたのは大学時代。香川県屈指の進学校・丸亀高から進学した同大では2年秋まで未勝利。壁にぶつかっていた。

「大学3年のタイミングで花野(巧)監督が就任し、投球フォームを改善しない限り、通用しないと言われたんです。テークバックが大きく、打者がタイミングを合わせやすい、と。まずはショートアームにして、段階を踏んでフォームを固めていきました」

 1日200球以上を投げ、体に染み込ませた。3年春からは中心投手の一人となり、初めて規定投球回数に達した秋には防御率1位(0.74)でベストナインを初受賞。4年時も先発、救援でフル回転して関西学生リーグで39試合に登板し、通算4勝を挙げた。

「2年後のプロ入り」を目指したENEOSで、入社1年目の昨年は公式戦で経験を重ねた。社会人日本選手権1回戦(対TDK)では「社会人二大大会」で初登板。三番手で8回から1イニングを無失点に抑えたが、ベンチに戻ると、大久保秀昭監督(慶大)に呼ばれた。9対2と大量リードした場面での救援で、1安打1四球。本来の投球内容ではなく、指導を受けたという。課題を修正して臨んだHonda熊本との準々決勝では、三番手で1回無失点と、マウンドで成果を見せたのだった。

スポニチ大会で目指す優勝


2024年のチームスローガンは「LOVE BASEBALL 勝、勝、勝」。一つでも勝利に貢献していく[写真=BBM]


 勝負の入社2年目。ENEOSは2月6日から18日まで「キャンプ」という名の「強化練習」を行った。活動拠点であるENEOSとどろきグラウンド(神奈川県川崎市)で3勤、5勤、3勤で2日の休養を挟んでの猛練習。早朝から夕方まで、まさしく野球漬けの13日間を過ごした。

 東山は期間中に5回、大久保監督から「特守」に指名された。うち3回は左腕エース・加藤三範(筑波大)と組み、2回はマンツーマン。指揮官の今季の期待への「意思表示」だった。

「昨年は糸川(糸川亮太西武)さんが受けていたんです。今年? もうヘロヘロ(苦笑)。もちろん、そういう立場と理解しています」

 ENEOSには左腕・加藤、右腕・関根智輝(慶大)の先発2本柱に、救援、先発をマルチでこなす30歳のベテラン右腕・柏原史陽(同大)と、2022年の都市対抗制覇を遂げた盤石の投手スタッフが控える。「自分がその3投手の枠に食い込んでいけるか、ですね。都市対抗予選を通じて大事な場面で投げて、都市対抗本戦では橋戸賞(大会MVP)。社会人年間表彰では1点台前半で、最優秀防御率投手賞を目指していきたい」。自覚十分である。変化球もカーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップと精度が高い。

「昨年は糸川さん、度会がドラフト指名を受けました。あれだけ注目された中で結果を残すのは、すごいこと。今年は自分がチームの中心となって活躍し、ENEOSの勝利に貢献した上で、プロ入りという形で、お世話になった方々に恩返しをしていきたいです」

 3月9日に開幕するJABAスポニチ大会を前に、東山は「リリーフ、先発でも万全の準備をして、優勝を目指す」と目を輝かせる。春先のJABA大会で首脳陣の信頼をつかみ、都市対抗西関東予選では主戦で回る。入社2年目の東山がまず、思い描く青写真である。

文=岡本朋祐
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