高い身体能力を生かして
2年連続最下位からの巻き返しを狙う中日。各ポジションで熾烈なレギュラー争いが繰り広げられている中、育成で新加入したクリスチャン・ロドリゲスの評価が急上昇している。
最大の武器は遊撃の守備力だ。俊足を生かした広い守備範囲で、グラブさばきは華麗かつ堅実。どんな体勢からも強肩で安定した送球をする。実戦で守備能力の高さをいかんなく発揮している。2月18日の練習試合・
ヤクルト戦(浦添)では7回無死一塁で、
内山壮真の頭上を襲う打球を驚異的なジャンプ力で好捕。振り向きざまに一塁へ矢のような送球で併殺を完成させた。
25日のオープン戦・
阪神戦(北谷)では8回一死一塁で
前川右京が放った打球が三遊間へ。一塁走者がスタートを切っていたため、二塁ベースカバーに入ろうとしていたロドリゲスは逆を突かれた形になったが、反転して好捕。右膝をついた状態から一塁に送球してアウトに。外野に抜ければ一、三塁とピンチが広がっていた。チームを救う美技にスタンドから拍手が送られた。
映像を確認した他球団の首脳陣は、「体の強さ、しなやかさ、使い方とすべての点で好素材。肩が強いだけでなく、捕ってから送球までのスピードが違う。日本人の遊撃手ではなかなか見られないですね。身体能力の高さで言えば、ヤンキースで活躍したソリアーノと重なる。打撃はまだまだ粗削りだがパンチ力がある。早期の支配下昇格が十分に考えられるのでは」と分析する。
課題の打撃で結果を残せば
キューバ出身の21歳は身長184センチの大型遊撃手で、昨年11月のU-23世界大会にも出場している。今季のキューバ国内リーグでは打率.245と打力向上が大きな課題だが、第2クールから北谷の一軍キャンプに合流。尊敬する
ダヤン・ビシエドの助言を受け、バットを熱心に振り込んでいる。17日の練習試合・
DeNA戦(北谷)では2本の適時二塁打を放ってアピール。2回二死一、二塁での好機で
小園健太から左翼線に適時二塁打を放つと、6回にはサブマリン・
中川颯の初球を左中間へ運んだ。
遊撃のレギュラー争いは熾烈だ。守備能力の高さで言えば
龍空、ドラフト3位のルーキー・
辻本倫太郎、打撃では
オルランド・カリステ、攻守のバランスでは
村松開人と色分けできるが、突き抜けた存在がいない。ロドリゲスは守備能力で際立っており、一軍のレギュラーを張れる水準に達している。打撃で結果を残し続ければ、支配下昇格はもちろん、開幕スタメンが見えてくる。
育成からはい上がったクローザー
中日はキューバ出身の選手が活躍してきた歴史がある。育成入団から球界を代表するストッパーに上り詰めたのが、ライデル・マルティネスだ。2017年2月に中日に育成枠で入団。剛速球が魅力だったが、制球力、変化球の精度、フィールディングなどに課題を抱えていた。コツコツと努力を重ねてステップアップし、18年4月に支配下に昇格すると、守護神に抜擢された20年10月2日のDeNA戦(横浜)で自己最速の161キロを計測。同月17日の
広島戦(マツダ広島)で24イニング連続奪三振をマークし、セ・リーグ新記録を樹立した。
22年は自己最多の56試合登板で4勝3敗39セーブ5ホールド、防御率0.97で、自身初の最多セーブ投手のタイトルを獲得。昨年も48試合登板で3勝1敗32セーブ9ホールド、防御率0.39と驚異的な安定感だった。
絶対的守護神の座を確立しても、向上心旺盛な姿勢は変わらない。マルティネスはシーズンを終えて週刊ベースボールの取材で、こう語っている。
「キューバに帰ってからも練習するよ。シーズンの中で悪かった部分や修正する部分をちゃんと考えながら、という感じかな。そして良い部分は伸ばしていく。そのバランスがうまくいっているから、今年もこの数字(32S、防御率0.39)になっているのだと思う。自分の場合は、球速(自己最速161キロ)に注目が集まることが多いんだけど、自分の中では球速はそこまで気にはしていないんだ。でも、まだ伸びるんじゃないかなとは思っている。そのためには、まずトレーニング。球速はあとからついてくるもの。自分でも楽しみにやるよ。今年は9月に離脱してしまったので、まずは1年投げられるように。健康体で日本に帰って来られるようにしたいね」
ビシエド、マルティネスと日本球界で活躍する先輩たちの姿は、よきお手本になる。ロドリゲスもジャパニーズドリームをつかめるか。
写真=BBM