重圧を解き放つ、心温まる言葉

センバツ開会式で日本高野連・寶会長が「励ましの言葉」を述べた[写真=田中慎一郎]
第96回選抜高校野球大会が3月18日に開幕した。日本高野連・寶馨会長は開会式の「励ましの言葉」で、球児に質問を投げかけた。
「出場校の皆さん、なぜ、この甲子園大会に出て来られたのですか? 今一度、考えてみてください」
寶会長は、3つの回答を想定した。
「野球に強い学校に入ったからでしょうか? 監督さんや部長先生が良かったからでしょうか? もちろん、皆さん、大変な努力をされたと思います」
そして、本筋に入った。
「子どものころ、グラブやバットを、誰に買ってもらいましたか? 毎日、毎日、洗濯をしたり、お弁当を作ってもらったりしてもらいましたよね? 支えてくれた家族、親戚、友達、先生に支えられてきたと思います」
重圧を解き放つ、心温まる言葉が続いた。
「出場してきた皆さんはもう、試合に勝ったとか負けたとか、そんな勝敗のことよりも、自分たちの力を精いっぱい出し尽くすことのほうが、大事だと思いませんか?」
感謝の思いを体現する。言うまでもなく、全力プレーしかない。緊張して力を出し切れない、では、最ももったいないのである。だからこそ、寶会長は球児たちを再度、励ました。
「100周年の歴史を迎えたこの甲子園球場で、センバツ大会で、思い切り駆け回って、チーム一丸となって戦ってください。これまでの努力の成果を存分に発揮してください。ゲームが終わったら、それができたかどうか? 今一度、考えてみてください。皆さん、ハツラツとしたプレーと、素晴らしい試合が展開されることを期待して、私の励ましの言葉とさせていただきます」
そして、一呼吸を置いて「頑張ろう!!」と締めた。寶会長は京大の元監督、元部長であり、学生野球の指導における超ベテランである。教育者の視点から、高校生にも理解しやすいメッセージ。甲子園の土を踏みしめる意義を感じながら、選手たちは躍動の場とする。
文=岡本朋祐