明らかに変わった高校野球
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今センバツ大会から新基準の金属バットが導入された。低反発により飛距離が抑えられ、明らかに長打が減っている[写真=毛受亮介]
第96回選抜高校野球大会は第5日(3月22日時点)を終えて、出場30校が登場した。甲子園のネット裏では12球団のNPBスカウトが視察。今大会から完全移行された新基準の金属バットを、どう見たのか。複数のスカウト幹部に話を聞いた。
明らかに高校野球が変わった。22日までに1回戦15試合を終えて、大会本塁打は2本。飛距離が抑制され、長打も減った。「空中戦」はなくなり、いかにして1点を取るか……。走者が出れば、犠打で得点圏へ送り、そこからどう1本を出すか。一死からでもバントで得点圏というケースも見かける。ここで、二塁から安打1本で本塁に生還する走塁技術が求められる。さまざまな作戦、機動力を駆使して三進してから、勝負にかける展開もある。
新基準バットの仕様は、打球部は従来の3ミリから4ミリと肉厚になり、トランポリン効果を抑制した。また、最大径が64ミリと3ミリ細くなり、木製バットに近い形状となった。各種試験で反発性能は5〜9%、打球初速は約3.6%減少する結果が示されていた。
高校球児を視察するプロ関係者は「結果」よりも「内容」を重視する。つまり、プロで通用するのかの「技術」を見極める作業である。用具変更の影響はあったか。感想を聞いた。
「選手はこのバットが『飛ばない』という固定観念があるのか、全体的にスイングが弱い印象を受けました。ネット裏に飛んでくるファウルチップにも勢いがない。私たちはバットの『出』を見て判断します。(原則、評価が決まる夏までに)指導者がボールを強くたたく技術を教えられるかで、差が出ると思います」(
広島・
苑田聡彦スカウト統括部長)
「従来のバットでは、芯に当たっていない打球でも飛んでいたわけで、(新基準バットとなり)われわれとしては分かりやすく、評価しやすくなる。パワーではなく、技術。『木製に近い』という意味では(プロ側からしてみれば)良い方向に行っていると思います」(
日本ハム・大渕隆GM補佐兼スカウト部長)
「芯に当たったら飛ぶと言われていますが、実際は芯でも飛距離が出ていないケースが見られ、低反発の影響を感じました。折れにくい木製バットもあると聞きますが、今後『木製のほうが良い』という選手も出てくるか」(
ヤクルト・橿渕聡スカウトグループデスク)
日本ハム・大渕GM補佐兼スカウト部長は「投手目線」で、こう言及した。
「今大会はロースコアの展開が目立ちますが、投手は芯を外すためのコンビネーション、コントロール、ボールのキレを意識し、コーナーを突けば抑えられることを再認識したと思います。球速ではない投球術。打者は今後、練習、試合を重ねて、技術を上げてくるでしょう。夏まで時間をかけて見ていきたいです」
複数のスカウト幹部によれば、今センバツは全体的に「小粒」の傾向だったという。「即戦力」「上位候補」というよりは「素材型」の発掘がメインだったようだ。3月の欧州代表との強化試合で、侍ジャパントップチームに大学生4人が名を連ねるなど、2024年ドラフトは「大学生の年」と言われている。ただ、高校生は過去のドラフト戦線を振り返っても、5月以降に突如として逸材が台頭してくるケースもある。さまざまな機種が普及し、便利な時代になっても、各球団のスカウトは全国津々浦々、足で生の情報をつかんでいく。
文=岡本朋祐