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首都大学リポート

史上初の「一部昇格即V」を果たした帝京大 チームをバットで引っ張った彦坂藍斗【首都大学リポート】

 

取り組んできた逆方向への打撃


帝京大は14季ぶり5度目の首都大学リーグ制覇。史上初となる「一部昇格即V」に貢献したのは3年生スラッガーだった


【5月11日】首都大学一部リーグ戦
帝京大3-2東海大(帝京大2勝1敗)

 首都大学リーグ第6週1日目。首位・帝京大が2位・東海大との3回戦を3対2で制し、14季ぶり5度目のリーグ優勝。試合後、会見場に姿を現した唐澤良一監督は涙ぐみながら「学生たちが一生懸命やってくれたおかげ。そして、OBや学校関係者の皆様が本当に応援してくださったので、感謝の気持ちしかありません」と口にしている。

 二部から一部へ昇格したシーズンでリーグ制覇を果たしたのは史上初。チームをバットで引っ張ったのは彦坂藍斗(3年・享栄高)だ。彦坂は中学時代に愛知豊橋ボーイズの主軸として日本一を経験。享栄高の3年春には東海大会で準優勝したが甲子園の土を踏むことはできず、帝京大へ進学した。

 1年春から先発に名を連ねたが、チームは一部最下位で入れ替え戦でも敗退し、無念の二部降格。彦坂も結果を残せず「チームに迷惑を掛けただけでした」と振り返る。以降3シーズンは二部でプレー。昨秋はリーグトップ(2部)の3本塁打を放ち、二部優勝と一部昇格に貢献した。「二部は一つ負けてしまうと優勝が厳しくなってしまう状況なので、1試合1試合を大事にして戦ってきました」

 4季ぶりとなる一部でのプレーを前に、シーズンオフは逆方向への打撃に取り組んできた。

「高校までは引っ張る打球が多かったのですが、自分はホームランバッターじゃないので逆方向へ強い打球を打つのが理想。インコースはレフトへポテンヒットでよいので、その代わりにアウトコースは強くたたいていく練習をしてきました」

 今春は開幕当初から好調を維持。特に第2週の筑波大2回戦では4安打3打点。第4週の東海大1回戦では本塁打を放った。

「試合では力まないように全身の力を抜き、余裕を持って打席に立つようにしています。ホームランはインコースを攻められていたので、ヤマを張っていたら打つことができました。1年生の時とは違ってチームの役に立っている実感があります」

打率.424まで上昇


 勝てばリーグ制覇となるこの日の東海大3回戦。「三番・中堅」で先発出場した彦坂は1回表に東海大の先発・米田天翼(2年・市和歌山高)から左中間へ先制の適時二塁打。

「ストレートを意識していたのですが、アウトコース低めに落ちていく変化球をうまくとらえることができました。以前、対戦した時(東海大2回戦)は抑えられてしまったのでとにかく気持ちで打ちました」

 その後、リードを許したものの3回表の第2打席では無死一塁からチャンスを拡大する左翼線への二塁打を放ち、チームは逆転に成功。このリードを先発・榮龍騰(4年・津田学園高)が守り切り、首都の頂点にたどりついた。

「中学時代に日本一になりましたが、二部で苦労した分、今日の優勝の方がうれしかったです」と笑顔を見せた彦坂。

「冬の間に逆方向へ打つ練習を積み重ねてきたことでボールが長く見られるようになりました。そのおかげで毎試合のようにヒットが打てたのだと思います」と話すように、この試合を迎える前はリーグ3位だった打率は、さらに逆方向への2安打を加えたことで打率.424(33打数14安打)まで上昇した。

 最終週は首位打者を懸けた戦いになるが「タイトルは意識せず、やるべきことをやれば結果は出ると思います」と話す。ただ、その一方で首位打者を争う同じ帝京大のルーキー・根本剛希(1年・学法石川高)については「後輩には負けるわけにはいかない」とも話しており、最後の打席まで目が離せない。

 帝京大は7年ぶり3回目の全日本大学選手権の出場権を獲得した。彦坂は「全国にはもっと良いピッチャーがいると思いますが、全国の舞台でもこれまで通りに一戦必勝で勝ち進んでいきたい」と抱負を語り、首都大学野球連盟の代表として、活躍が期待される。

文&写真=大平明
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