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【大学野球】V逸の段階で「石橋を叩いて渡る」早大1回戦を落としても前を向く慶大

 

シーズン3位が決定


慶大は早大1回戦を落とし、シーズン3位が決まった。写真左から加藤部長、堀井監督、中根助監督、宮田主務[写真=矢野寿明]


【6月1日】東京六大学(神宮)
早大8-1慶大(早大1勝)

 今季最多、3万人の大観衆。三塁と左翼を埋めた慶大応援席はあきらめていなかった。0対8の劣勢で迎えた8回表。慶大は早大の先発右腕・伊藤樹(3年・仙台育英高)から併殺崩れの間に、意地の1点を返した。

 この得点シーンで、神宮の杜は「若き血」の大合唱である。慶大は1対8で早大1回戦を落とした。主将・本間颯太朗(4年・慶應義塾高)の耳に、味方の大声援はどう届いたか。

「対抗戦の一つの早慶戦。『これだけのお客さんが入った中で野球ができることに感謝しよう!!』と言ってきました」

 第7週で明大が法大から勝ち点を奪取した時点で、慶大のリーグ優勝の可能性は消滅した。仮に明大が勝ち点を落としていれば、慶大は第8週の早慶戦で連勝(早大と勝ち点、勝率が並ぶ)すれば、早大との優勝決定戦へ持ち込める星勘定だった。慶大・堀井哲也監督は「3連勝」への準備を、着々と進めていた。

「1回戦を外丸(外丸東眞、3年・前橋育英高)で先勝した後、2回戦は打たないと勝てない。得点力を上げるために、(主に一塁だった)清原(清原正吾、4年・慶應義塾高)を二塁に入れた攻撃的な布陣を見据えて約2週間、練習を積んできました。投手陣は短いイニングを、パワーピッチングでつなぐ。ハイリスク・ハイリターン。ここで2回戦を勝ち切って(中1日が想定される)優勝決定戦は外丸をつぎ込むという、シミュレーションでいました」

「明日のカードに全力を尽くしたい」


 V逸の段階で「石橋を叩いて渡る」と、堀井監督は勝ち点奪取(2戦先勝)を逆算した、セオリーの戦い方にシフトチェンジした。天皇杯の可能性がなくなっても、モチベーションが下がることは一切ない。早慶戦は1903年11月21日に始まった歴史あるカード。明治、大正、昭和、平成、令和とつながれてきた伝統の一戦に照準を合わせてきた。

「ウチは六大学の一員。優勝争いは早稲田と明治になりましたが、法政、立教、東大のためにも、下手な試合はできません。優勝がなくなったからと言って、気持ちを引いた試合をすることは、失礼な形になる。5大学との対抗戦である以上、全力を尽くす必要がある」

 1回戦を落とした後の会見も、堀井監督は「今日の試合を振り返るより、明日のカードに全力を尽くしたい」と前を向いた。主将・本間も「リーグ戦は2勝を挙げたほうが勝ち点を取る。2回戦に向け、気持ちを切り替えたい」と力強く語った。そして、こう続けた。

「結果としては負けましたが、自分たちのやれることをやろう!! ということに関しては、最後まで貫けた。明日は結果として出せるようにしたい」。慶大は今春、規定打席に到達している打者は(三塁の)本間、(遊撃手の)水鳥遥貴(4年・慶應義塾高)、清原の3人のみ。昨秋のリーグ戦優勝、明治神宮大会優勝メンバーである本間は「昨年は先輩方がサポートしてくれ、自分と水鳥はフリーで気楽にグラウンドに立つことができました。今年は最上級生としてのプレッシャーはありますが、そこで結果が出せないのは実力不足」と語った。まだ、早慶戦は終わっていない。

 この日の黒星で、慶大のシーズン3位が確定した。早大は2020年秋以来のリーグ戦制覇へ王手をかけ、慶大は2回戦を落とすと、ライバルの歓喜を見届けることになる。一方で慶大が2回戦、3回戦で早大に連勝すれば、相手の胴上げを回避できる(勝ち点、勝率で並ぶ早大と明大による優勝決定戦へ)。早大2回戦も大観衆が予想され、三塁と左翼は慶大ファンで埋まるのは間違いない。慶大は最後の1球まで、大学の威信をかけて戦う。

文=岡本朋祐
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