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交流戦が鬼門の広島 ドラフト6位入団の「守備の天才」がキーマンに

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チームを勝利に導く守備


ショートで抜群の守備力を見せている矢野


 ソフトバンクに同一カード3連敗を喫した広島。6月2日の同戦では3点差を追いかける9回に田中広輔の2号右越え3ランで同点に追いついたが、延長10回に島内颯太郎近藤健介に8号サヨナラ2ランを浴びた。

 広島は交流戦が鬼門になっている。昨季までの通算成績は166勝227敗15敗。勝率.422は12球団で最も低い。リーグ優勝を狙うためには、交流戦で貯金を作ることが大きなポイントになる。身上とする守り勝つ野球で巻き返せるか。その象徴ともいえる存在が、今季急成長した矢野雅哉だ。

 広い守備範囲、球際の強さ、巧みなグラブさばき、安定した送球……内野の守備能力で言えば、球界トップクラスだろう。昨年は自己最多の93試合出場。守備固め、代走で途中出場が多く、先発出場は34試合にとどまったが、ゴールデン・グラブ賞の遊撃手部門で9票を集めて4位に。今年も好守でチームを再三救っている。5月21日の阪神戦(マツダ広島)では初回無死一塁で中野拓夢の鋭い打球が二遊間に。ダイビングキャッチすると、グラウンドに突っ伏した状態からバックハンドで二塁に入った菊池涼介にトスし、俊足の一塁走者・近本を二塁で封殺した。このビッグプレーで試合の主導権を相手に渡さず、6対2で快勝した。

 遊撃が本職の小園海斗を三塁に回し、遊撃でスタメン出場し続けるのは首脳陣の信頼をつかんだ証しだ。二塁で起用されても、ファインプレーを連発している。5月26日のDeNA戦(横浜)では、2対1の初回二死三塁で、宮崎敏郎の右前に落ちようかという打球を全力で追いかけてスライディングキャッチ。同点を阻止した。2回も無死二、三塁のピンチで前進守備の体制から、林琢真の一、二塁間を抜けそうな打球を横っ飛びで捕球して二ゴロに。三塁走者の生還も許さない。先発のアドゥワ誠が後続を凡打で切り抜けて無失点に。矢野の好守が光り、4対2で逃げ切った。

菊池涼介が良きお手本


 献身的なプレーでチームを支える矢野は広島のチームカラーに合う。良きお手本が、二遊間を組む菊池涼介だ。二塁で歴代最多の10度ゴールデン・グラブを受賞している名手と自主トレと自主トレを行い、守備のイロハを学んでいることが大きなプラスアルファになっている。矢野は菊池の凄さを週刊ベースボールの取材で語っている。

「普通にヒット性の当たりでもアウトにしますし、6-4-3のゲッツーで自分がヤバイと思った送球をしても、何事もなかったようにカバーをしてくれることが多い。カバーしてもらったときは、どうしたらよかったのか、聞きに行くようにしています。そうすると、丁寧に教えてくれるんです。想定外の打球でも菊池(菊池涼介)さんは慌てずに処理する。“いかに冷静に対応できるのか”というのも教えてもらいました。ボールに対して余裕を持って。ムダな動きをなくせば余裕もできる。ポジションはセカンドとショートで違いますが、やっぱり守備の目標は菊池さん。いつかゴールデン・グラブ賞を二遊間で獲りたいです」

「バッティングで迷惑を掛けることも多い分、守備でどれだけチームに“プラス”を与えられるかを、試合に出るときは考えています。菊池さんと二遊間を守らせてもらっていることもあって、ポジショニングなど、より深く考えるようになりました。アウトを取ったプレーでも、気になることがあれば、菊池さんに聞きに行って教えていただいたり。今までだったらアウトにして終わりだったんですけど、次に生かせるように。毎試合、勉強です。ポジショニングは、バッターのスイングだけじゃなくて、ピッチャーのその日の状態とかにもよる。プレーボールからしっかり観察、確認して、いろいろと考えるようにしています」

課題の打撃でも成長


バッティングも徐々に力強さが増している


 課題の打撃でもシュアな打撃で成長の跡を見せている。5月29日のオリックス戦(マツダ広島)では、1点リードの3回一死二塁で、オリックスの田嶋大樹に2球で追い込まれたが、ファウルで粘って7球目のカットボールを右中間に運ぶ適時三塁打。自身初の三塁打で一塁ベンチに向かって拳を突き上げた。5月は月間打率.264、4打点、4盗塁。春先は下位を打つことが多かったが、最近は二番でスタメン出場が増えている。

 ドラフト6位で亜大から入団した際は注目度が高いと言えなかったが、プロ4年目を迎えてチームの核になろうとしている。矢野の一挙手一投足に要注目だ。

写真=BBM

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