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中日の長距離砲が驚異的な本塁打率 他球団「日本野球に慣れると怖い」警戒が

 

試合の流れを呼ぶ一発


豪快なバッティングが魅力のディカーソン


 中日細川成也が球界屈指の飛距離を誇るが、この助っ人も引けを取らないだろう。打線の起爆剤として期待されるのが、新外国人のアレックス・ディカーソンだ。

 メジャー通算40本塁打をマーク。左の大砲として期待されたが、開幕直後に腰の違和感で戦列を離れた。一軍昇格は5月24日。「六番・左翼」でスタメン起用された同日のヤクルト戦(バンテリン)は3打数無安打と結果を残せなかったが、翌25日の同戦で打順が五番に上がったことが、立浪和義監督の期待の高さを物語っていた。

 自慢のパワーで起用法に応える。2回の打席でヤフーレのチェンジアップを振り抜くと、高々と舞い上がった打球は右翼席へ。来日初アーチが決勝打となり、「(戦線離脱中は)リハビリをして一軍の試合を見て分析していたので、このような結果につながってよかったです。多くの皆さんが応援してくれて特別な感情になりました。一生覚忘れません」とお立ち台で穏やかな笑みを浮かべていた。

 左打者の典型的なローボールヒッターで、きっちりとらえた打球はスタンドを軽々と越える。同月28日の西武戦(バンテリン)では4回に今井達也の内角低めに食い込んでくるスライダーを右翼ポール際へ。球界全体で投高打低の傾向が進む中、ディカーソンの「飛び道具」は大きな武器になる。6月2日のオリックス戦(京セラドーム)では7回まで無得点に抑えられていたが、8回に本田仁海の152キロ直球を完璧にとらえると、打球は3階席へ消える特大アーチ。ダイヤモンドを1周すると、大好きな漫画『ドラゴンボール』で悟空の必殺技・かめはめ波のパフォーマンスを披露した。この一撃で試合を振り出しに戻すと、延長12回に中田翔が決勝打を放ち、逆転勝利を飾った。

 今季12試合出場で打率.184、3本塁打、4打点。計7安打のうち、3本塁打と半分近くをスタンドに叩きこんでいる。打率は低いが選球眼が悪いわけではなく、出塁率.311をマークしている。他球団のスコアラーは「速い直球に差し込まれないし、長打力があるパワーヒッターだけど打撃が柔らかい。変化球への対応力も高そうです。高めをうまく使って抑えられるかがポイントになる打者ですね。日本野球に慣れたら怖い雰囲気があります」と警戒を強める。

驚異的な本塁打率の助っ人


三振か、ホームランかのバッティングで87年に本塁打王に輝いたランス


 かつて、驚異的な本塁打率で強いインパクトを残したのが、元広島R.ランスだ。来日1年目の1987年に121試合出場で打率.218、39本塁打、83打点をマーク。阪神ランディ・バース、ヤクルトのボブ・ホーナーと強打者たちを抑えて、本塁打王を獲得した。打率は規定打席到達者の中でワースト、114三振もリーグ最多だったが、シーズン88安打のうち、45%の39本塁打を記録した。

「三振か本塁打」の打撃は相手バッテリーにとって厄介だったが、翌88年は確実性を上げるために打撃フォームの改造を首脳陣に命じられる。「今年から、ホームランよりも打率を残すバッティングをする。そのための練習なんだ」と前向きに取り組んだが、豪快な打撃が影を潜めて魅力が消えてしまった。打率.189、19本塁打、50打点、58三振。結果を残せず夏場にスタメン落ちするとモチベーションが下がり、シーズン途中の9月6日に退団した。

 当時対戦した他球団の投手は「ランスの打撃はフライボール革命全盛の現在だったら評価がまったく違っていたと思います。投手が一番怖いのはブンブン振って、少しでも甘く入ったらスタンドに運ばれる打者です。ランスは実際に怖かったですよ。スランプが長いけど、打ちだしたら本塁打を量産する。意外性の選手でしたね」と振り返る。

 ディカーソンはランスに比べて空振りが少なく、ボール球になる変化球をきっちり見極められる。日本野球に慣れるまでは少し時間を要するだろう。首脳陣がどこまで我慢して起用し続けられるかがカギを握りそうだ。

写真=BBM
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