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【大学野球】大商大の「秘密兵器」が早大相手に快投 高校時代は山田陽翔の陰に隠れていた左腕

 

9回途中まで6安打無失点


大商大の先発左腕・星野は9回途中まで無失点の力投を見せた[写真=古賀恒雄]


【第73回全日本大学野球選手権大会】
▼6月11日 2回戦 東京ドーム
早大(東京六)1−0大商大(関西六)
※延長10回タイブレーク

 まさしく「秘密兵器」である。

 今春、関西六大学リーグで登板機会のなかった大商大の左腕・星野世那(2年・近江高)が、早大との2回戦で先発した。9回途中まで6安打無失点の力投。東京六大学リーグ戦でチーム打率.304の早大の強力打線から11奪三振。140キロ中盤のキレあるストレートを軸にカットボール、カーブ、チェンジアップを駆使し、持ち味を存分に発揮した。

 試合は延長10回タイブレークの末、0対1で大商大は惜敗。とはいえ、星野のピッチングは東京ドームで相当なインパクトを残した。

 メンバー交換の際、早大サイドは困惑したという。小宮山悟監督は試合後「まったく頭になかった投手。手を焼くかな? とは思いましたが、ここまで焼くとは……。強いボールを投げ、良い投手だと思います」と明かした。

 奇襲ではない。大商大・富山陽一監督は前日の1回戦(対中央学院大)で完封した右サイドの「鈴木(鈴木豪太、3年・東海大静岡翔洋高)の後に良い投手。もともと良いですが、ここに来て、状態が上がってきた。真っすぐがスピンの効いたボールを投げる」と、大会前から初戦を勝ち上がった場合の2回戦での先発起用を決めていた。星野は開幕前日の登録変更でベンチ入りした。

 星野は2022年のセンバツで準優勝を遂げた近江高ではエース右腕・山田陽翔(西武)の控え投手だった。「悔しい思いをした。大学では勝利に貢献できる投手なりたいと思っていました」。2年春を迎える前にアクシデントがあった。今年2月に左肘を痛め、約1カ月ノースロー。「無理はしたくなかった」。完治するまで我慢し、これが吉と出た。離脱期間は自らと向き合った。「ケガをしないように下半身を使い、体を大きく使うフォームに修正しました」。トレーニングで体重は5キロ増の80キロ。富山監督は「四球で崩れる子」と、課題だった制球難の克服にも努めた。

ストライク先行を心掛けた投球


 東京ドームのマウンドでは、とにかく「ストライク先行」を心がけ、この日の結果につなげた。この日は近江高・多賀章仁監督がスタンドで観戦し、星野は「高校時代より成長した姿を見せられたと思います」と振り返った。そして、こう言った。「少しは自信がついた。素晴らしい舞台を経験させていただき、今日できたことを継続して、またここに戻って来られるように、練習を重ねていきたいです」。

 富山監督は「自信がついたでしょうね。これからが楽しみ」と目を細めた。高校時代はエースで主将を務めた山田の存在感があまりにも大きかった。脚光を浴びる機会が少なかったサウスポーにとって今大会、野球人生のターニングポイントとなる一戦となった。

文=岡本朋祐
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