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【大学野球】指揮官は「文句のつけようがない」早大・伊藤樹が大商大相手に10回完封勝利

 

タイブレークも冷静に対処


早大・伊藤は延長10回を投げ、散発4安打で完封した[写真=古賀恒雄]


【第73回全日本大学野球選手権大会】
▼6月11日 2回戦 東京ドーム
早大(東京六)1-0大商大(関西六)
※延長10回タイブレーク

 東京六大学リーグ戦には、タイブレーク制がない。日程消化が最優先される全日本大学選手権では、同ルールが適用される。不慣れな運用にも、早大の先発右腕・伊藤樹(3年・仙台育英高)はしっかりと対応してきた。

 大商大との初戦(2回戦)は双方無得点のまま、9回で決着がつかなかった。10回からは無死一、二塁からのタイブレーク。早大は10回表無死満塁から途中出場の梅村大和(4年・早実)の右犠飛で先制点を挙げた。しかし、追加点は奪えず、1対0で10回裏の守り。欲を言えばだが……相手も必死だ。

 伊藤は試合後「一死二、三塁のことを考えていました」と明かした。バント成功を想定して、その先のピンチまでを見据えていた。結果、先頭の相手打者は送れず、一死一、二塁となった。正捕手・印出太一(4年・中京大中京高)が判断良く、二塁走者を封殺したのだ。「バントをさせないことは大前提としていましたが、運良く、サードでアウト。良い方向に進んだな、と」。努めて冷静だった。

 大商大は次打者が執念の犠打を決めて、二死二、三塁と見せ場を作った。一打サヨナラのピンチではあったが、伊藤は左飛に抑えて、1対0のシャットアウト勝利で締めた。

「10回裏に失点していたら『まだまだだな!!』というところでしたが、ゼロで抑えて、エースの仕事ができました」。背番号11・伊藤は気持ち良さそうに汗をぬぐった。

「テンポ良く、テンポ良く、ホームを踏ませなければいい。ピンチになっても、ゼロで切り抜ければいい」。プロ注目の四番・渡部聖弥(4年・広陵高)との対戦は見応えがあった。6回裏二死三塁。「長打を打たせないこと。チャンスで1本を出させないこと。インコースの3球(で二飛)は一つのターニングとなった」と、手応え十分の内容だった。

増すばかりのエースの存在感


 大商大は前日の1回戦(対中央学院大)を勝ち上がっての2回戦。一方で、早大は大会初戦であり「入り」がポイントだった。

「難しい初戦で僅差をものにできたのは、次につながる。東京六大学の代表として優勝を目指す」。伊藤は今春の東京六大学リーグ戦で8試合に登板し、3勝0敗、防御率1.49。今大会も安定感ある投球内容を継続している。

 この春から早大のエース番号である「11」を託した小宮山悟監督は「やればできるじゃないか、と。能力が高いことは分かっている。2年間、モタモタしていたのはこちらの責任もあるかと思いますが、しっかりとした投球をしてくれた。四死球(4)はありましたが、文句のつけようがない」と目を細めた。

 これでベスト8進出。9年ぶりの大学日本一まで、あと3勝である。伊藤にとって、この日は人生初の東京ドームで「(幼少時から)テレビで(プロ野球を)見ると、いつもドームで育ってきたので、うれしいです。(出身地の)秋田は楽天の試合が映らないので……」とはにかんだ。準々決勝から決勝までの3試合は、慣れ親しんだ神宮球場が試合会場である。確固たる自信をつけた3年生・伊藤の存在感は増すばかりだ。

文=岡本朋祐
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