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【大学野球】2年連続大学日本一の青学大 「管理したくない」…強さの源にある“自主性の文化”

 

最も大事にする「先輩と後輩」の絆


青学大・安藤監督は学生の手によって神宮の杜を舞った[写真=矢野寿明]


【第73回全日本大学野球選手権大会】
▼6月16日 決勝 神宮
青学大(東都)2-1早大(東京六)

 青学大は2年連続6度目の大学日本一を遂げた。2010、11年の東洋大以来の快挙である。19年1月から母校を指揮する安藤寧則監督は記者会見において開口一番、こう言った。

「幸せです。自慢の後輩です」

 安藤監督は「指導者と部員」の関係である一方で「先輩と後輩」の絆を、最も大事にする。男子部員37人。スポーツ推薦は毎年8人ほど。安藤監督はこの「8人」の勧誘に全力を注ぐ。言うまでもなく、青学大野球部の将来をつなぐ「後輩」となるからだ。惚れ込んだ高校生には、何度も現場へ足を運び、大学の魅力、熱意を伝える。「ご縁」をもらった選手に対しては4年間、愛情を持って接する。

 少数精鋭。しかも、全寮で指導したい思いが強い。相模原キャンパス内にある野球部寮の収容の事情で、この部員数を原則としている。

「ご縁」をもらう上での基準はあるか。安藤監督は「ウチの環境に合う子」と明かす。青学大の環境とは? 運営における伝統がある。

「自主性の文化は崩したくない。管理したくない」

「自主性」を履き違えてはいけない。相当な自己管理能力が問われるのだ。実は対極である「指示待ち」のほうが楽かもしれない。しかし、それでは大学卒業後、社会人として自立することはできない。「話せば分かる子と、ご縁をもらっている」。だからこそ、高校生のスカウティングには、より慎重になる。

「自主性」で花開いた選手


 今大会、この「自主性」で花開いた選手がいる。打率.467(15打数7安打)で首位打者賞を受賞した中田達也(3年・星稜高)だ。

 今春の東都大学リーグ戦では規定打席に到達した36人で最下位の打率.119(42打数5安打)だった。リーグ3連覇を遂げた歓喜の一方で、中田は相当な危機感を抱いていた。

「何か変えないといけない。こだわってきたフルスイングを捨てて、コンパクトに振る。バットを短く持ち、ボールを上からつぶすことでミート率を上げた」

 リーグ戦後から全日本大学選手権までの約10日間で、突貫工事を敢行。自主練習でフォームを固め、大会本番へと挑み、結果を残したのだ。自ら考え、行動し、実践。安藤監督が求める姿勢で、タイトルを獲得した。

「将来的にはやはり、フルスイングを求めたい」。首位打者賞は、あくまでも成長過程。中田はどん欲に上を目指すことを誓った。

就任時からブレない「日本一を目指す」


 安藤監督は勝負師である。チームに植え付けたのは「勝ちたいではなく、とにかく負けたくない」。就任した2019年1月からブレないのは「日本一を目指す」こと。当時は東都大学二部リーグに低迷しており「大学職員の前で抱負を語った際にも、失笑されました」と振り返る。活動している以上、頂点を目指す。「迷ったとき、悩んだときには原点に戻る」。「日本一」は心の拠り所であったのだ。

 主将・佐々木泰(4年・県岐阜商高)は「監督は選手以上に動き、鼓舞してくれる。ありがたいです」と信頼感を語る。就任以来、安藤監督は寮で学生たちと寝食をともにする。縛りつけることを最も嫌う。管理するのではなく、先輩として、後輩を見守っている。

 安藤監督の人生の師は、大学4年間、指導を受けた河原井正雄元監督だ。勝利への執着心は、半端なかった。全日本大学選手権は今大会で7回目の出場で、優勝6度、準優勝1度。27勝1敗、勝率.964を誇る。恩師の勝負勘を引き継ぎ、学生との対話の融合。就任6年目で青学大の新たなスタイルを確立した。河原井監督は平成だけ4度(1993、96、99、2005年)の大学日本一へと導いたが、安藤監督も「令和の黄金時代」を築き上げていく。

文=岡本朋祐
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