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巨人・岸田行倫が正捕手奪取に大きく前進 大城卓三の「今後の起用法」は

 

攻守で高いバランス


今季は先発マスクをかぶる機会が大幅に増えている岸田


 巨人阿部慎之助監督が就任し、捕手の起用法が大きく変化した。強打が魅力の大城卓三が昨年まで正捕手を務めていたが、今年の先発マスクを見ると岸田行倫がチーム最多の32試合で、小林誠司が22試合、大城が16試合と続く。

 岸田は攻守でバランス能力が高い捕手で知られていたが、同期入団の大城の壁が厚く、一軍に定着できなかった。「第3捕手」の位置づけだったが、その序列をひっくり返した。開幕はファームで迎えたが、4月5日に一軍昇格すると投手の長所を引き出すリードで、信頼をつかんでいく。身ぶり手ぶりのジェスチャーでサインの意図を伝え、ブロッキング能力が高い。5月24日の阪神戦(甲子園)では、バッテリーを組んだ戸郷翔征のノーヒットノーランをアシストした。

 打撃もパンチ力とミート力を兼ね備え、広角に安打を打つ。5月22日の中日戦(東京ドーム)では自身初となるクリーンアップの五番でスタメン出場。6月11日の楽天戦(楽天モバイル)では、2回二死一塁でポンセから2号先制2ランを放った。この一発がプロ野球史上初の球団通算1万1000号となった。43試合出場で打率.273、2本塁打、8打点は十分に合格点をつけられる。

大城は一塁でスタメンも


自慢のバッティングの安定感を取り戻したい大城


 一方で大城卓は試練を迎えている。昨年は自身初の規定打席に到達し、打率.281、16本塁打、55打点と自己最高の数字をマーク。リーグトップの21犠打とつなぎ役でも貢献度が高かった。守備面もリーグ2位の盗塁阻止率.373を記録し、2度目のベストナインに輝いたが、今年は苦しんでいる。開幕からスタメンで出場していたが攻守に精彩を欠き、5月8日にファーム降格。約3週間の調整期間を経て一軍に昇格後も先発マスクは4試合にとどまっている。

 6月23日のヤクルト戦(東京ドーム)では、「五番・一塁」でスタメン出場。一塁を守るのは21年10月8日の広島戦(マツダ広島)以来3年ぶりだったが、3回に左越え二塁打を放ち、守備も無失策ときっちりこなした。

 岸田、大城だけでなく、復活を印象付けている小林も貴重な存在だ。今季は同学年の菅野智之が先発したすべての登板日に先発マスクをかぶっている。昨年は4勝に終わった菅野だが今季は10試合登板で5勝1敗、防御率1.83をマーク。クォリティースタート(先発投手が6イニング 以上を投げ、自責点3 以内に抑えた時に記録される)は90パーセントと抜群の安定感を誇るが、女房役として支える小林の存在が大きい。

OBの捕手起用分析


 巨人で長年コーチを務めた野球評論家の村田真一氏は、捕手の起用法について週刊ベースボールの取材で以下のように分析している。

「その中でも阿部監督のキャッチャーのファーストチョイスは大城卓三で、それは今も変わらないのではないかと思います。ただ、あまりにも打撃不振が深刻過ぎた。同時に、キャッチャーとしての小林誠司や岸田行倫にはしっかり信頼を置いていたということでしょう。だから、大城を二軍で調整させるという判断をすぐに実行することができたのだと思います。5月中旬から岸田のスタメンマスクが増えましたが、それはシンプルにバッティングで結果を残していたからでしょう。リード面もそうですが、打撃との兼ね合いは当然あります。阿部監督が一番に考えているのは『いいキャッチャーを使う』ということではなく『巨人がどうやったら勝てるか』ですから、常にそこを追い求めながらオーダーを組んでいるわけです」

「ただ、岸田のバッティングの調子が最後まで続くとは考えていないと思います。小林の力はまだまだ必要ですし、大城の打撃が戻ってくれば、また大城が中心になるかもしれない。そのときのバッティングの調子を含め、今後も3人の併用が続いていくのではないでしょうか。私自身、1人のキャッチャーに依存するのではなく、力のある複数のキャッチャーによる併用制のほうがチーム力は安定すると思っているので、現在の形は良いと思って見ています」

 混戦が続くセ・リーグは、グラウンドの司令塔である捕手が大きなポイントになる。岸田、小林、大城が気温の上がる夏場に向けどのような活躍を見せるか。真価が問われるのはこれからだ。

写真=BBM
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